いつの頃だったか、十年以上前の話です。
学生の頃は電車通学していました。
最寄りの駅から終点まで20分位です。
朝の8時半くらいだったと思う。
相変わらず満員電車である。
今思えば満員電車というのも考えようによっては
一つの修行みたいなものだなと思う。
地元に戻ってからは、かれこれ4年くらい乗っていない。
その日はドアの近くに立ち尽くしていた。
ぎゅうぎゅう詰めだが目の前が若い女性だった。
顔は見えない。
黒髪のロングヘアがこちらに向いている。
私は眠いのでぼーっとしていた。
たまに立ったまま寝てしまい、ひざがガクッとなる。
程なく途中の駅に着いてドアが開く。
終点ではない。
若い黒髪はドアから降車する。
女性は降車の際にチラッとこちらに流し目を送った。
不思議に思っていると、不意に異臭がした。
・・・ ・・・?
・・・ ・・・!
そうか・・・あの女性(ひと)、(おならが)もれたのか
それならそれでやり逃げならぬ、こき逃げで一切振り向かず
まっすぐ猪突猛進のごとくその場から立ち去ればバレないのに・・・
まるで見返り美人みたいだった。
しかし、人間のおならというものはなぜ、空気より軽いのだろうか。
大気中の空気より重ければ、わざわざ臭うこともあるまい。
「これを食べればおならが浮上してきません」
というようなグミかキャンディーが開発されないのだろうか。
そうすれば車内か室内の床を流れるように、すかしっぺが
どこかへ消えると思うのだが。