10月10日 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

ヤングパーソンクラブ a.k.a. ヤンパクラ

こんにちわは、Fです。

今日から旅に出ることにした。自分を見つめなおす時間がほしい。

朝4時半、起床、歯磨き、着替え。持っていくかどうか迷っていた毛糸のシャツは持っていくことにした。寒いから。夜間に歩くことも多いだろうし、かかとがピカピカ光る運動靴を履いていく。

5時。駅まで徒歩15分。いつもは仕事の行き帰りと買い物くらいしか通らない道。見慣れたはずなのに今日は違ってみえる。吐く息が白い、まだ薄暗い空の、雲の色と同じ。

5時半、汽車が来た。行先は西、まずは西に向かう。東はもう海、南に行くと都会。車内にはちらほらと乗客の姿。先頭車両の一番前に行く。これから始まる小さな旅に胸が膨らむ。

5時45分、故障のため一時停車とのこと。旅は始まったばかり、焦っても仕方ない。ポケットから手帳を取り出し、旅の記録をする。1行目はもちろん、「車両故障」だ。

6時5分、復旧にはもうしばらく時間がかかるらしい。前の席のサラリーマンはイライラしながら車掌に詰め寄る。怒っても仕方ないのに。ひとしきり言い終えると黙ってスマホのゲームをしだす。

6時15分、運転再開。新しい旅の始まり。さっきのサラリーマンはうとうとと眠りだした。怒って、ゲームして、居眠りして、お前は子供か。スタートからハプニング続出だと一人微笑む。

6時16分、車掌から切符の点検を受ける。どうやらこの切符の有効期間ではないらしい。券面を確認したところ、来週から使えるようだ。車掌に事情を説明し、切符代を支払って下りる。

6時20分、結局今日は2駅しか進まなかった。行くにしても戻るにしても汽車はしばらく来ない。行くにしたってこの切符は使えない。自宅から直線距離で3キロ、歩いて帰れない距離ではない。

薄暗い初秋の朝、静かな街に俺の靴がピカピカ光る音だけが響いていた。