こんばんわ、Fです。
ちょっと金欠で、手持ちのお金を増やそうと、パチンコに行こうかなと思いました。
12 お弁当やさん
午後23時。やっと最寄り駅に到着。1週間の疲れと酔いで上がらない頭を落とさないよう、俺はふらふらと駐輪場に向かった。100円玉を入れて自転車を開放、部屋まであと10分。久しぶりの飲み会で飲みすぎてしまった。食べたものを全部吐いてしまった、こんなこと学生以来だ。お腹が空いてきた。いつものみどり弁当でも寄っていくか。
深夜0時。日付が変わった。駅から徒歩5分、すっかり寝静まった商店街の端にみどり弁当はある。俺がこの町にきて10年、みどり弁当での食事は1週間と欠かしたことはない。店主の親父さんは脱サラしてみどり弁当を始めたらしく、昔は結構な高給取りだったみたいだ。会社の歯車になるのに飽きて退職したとか。奥さんは5つ下で、芸能人でいうと誰にも似ていないけれど、綺麗な人だ。奥さん目当てに弁当を買いに来る人もいる。そんな二人が切り盛りするみどり弁当の周りには猫がたくさんいる。親父さんが毎日、残飯を猫にあげているからだ。こういう話になると、野良猫への餌やりとか、そういうモラルの話が出るけれど、ここでは一旦横に置いておいてほしい。親父さんが猫に残飯をやる、猫は喜ぶ、近所の人は別に迷惑していない、そんな関係だ。
野良猫っていうのは案外大変な生活で、いつでも食べ物にありつけるやつなんてそうそういない。よっぽど運動神経がよくてスズメでもネズミでも捕まえられる奴か、人間とうまいこと付き合える奴くらいだ。そんなわけでこの店の周りの猫は後者が圧倒的に多いから、客の受けもいい。この店は、猫にも、客にも愛されているわけだ。
注文した唐揚げ弁当が来るまでの間、油で湿ったジャンプを読む。やっぱりラッキーマンは面白いなぁ。途中、奥さんが厨房から出て行った。
唐揚げ弁当を受け取り、店を出る。ふと裏口を見ると奥さんが電話で話す声が聞こえた。こんな時間に誰とだろう?
奥さんはそっと目を閉じた。
震える声で、確かに、「さよなら」と言った。
俺は小さく「さよなら」とつぶやき、自転車に乗った。夏はまだ終わったばかりだった。