がんばれ!パクラ君!4 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

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部屋に戻ると、ケンジの買ったおせちにみんなが群がっていた。


「ケンジさん、これ、マジうまいっすよ!」

「実家でもこんな豪華なおせち食べたことないわ。ケンジ君、ありがとうね」


ケンジと初もうでに行っていたタカとユミコが高そうなおせちに群がっている。

奴らはマクドナルドの差し入れには手を付けないくせに、ケンタッキーやスシローの差し入れにはすぐに飛びつく。根が卑しい奴らだ。


ケンジは去年の夏にここにやってきた。

年齢は当時25歳、大学を卒業後入った会社を3年で退社したらしかった。

初めはしきりにコストパフォーマンスを考えてここにやってきたと強調していたが、一年以上もいるところをみると、なんだかんだでここの雰囲気が気に入っているのだろう。


「お帰りなさい。高島屋で買ってきたんだ。よかったら食べてよ。」

「ありがとうケンジ。冷蔵庫からコーラ取ってくる」

「あれっ?その子は?」

「ああ、彼はパクラ君。さっき初もうでで知り合ったんだ。」

「!!!」

「よろしく。あたしはユミコ、彼はタカ、あの人はケンジさん、このおせちをくれた人ね。」

「!!!」


パクラ君はうれしそうにおせちを眺めている。

俺は冷蔵庫からコーラを二本取り出し、一本をパクラ君にあげた。


「!!!」

「いやぁ、初もうでは人が多くて大変だったよ。ケンジはどうだったの?早い時間帯だったから空いてたかな」

「全然そんなことないっすよ、混んでたっす。普段どこに隠れてるんだっていうくらい人、いてましたよ」

「そうか。まぁ、今年は年末年始の連休も長いし、みんな活動的になってるのかな」

「!!!」

「うん、それもありえるよね」

「ところで、マツモト先輩、面接はどうだったんですか??15日に受けてたやつ、ほら、絶対好感触だって言ってたやつ」


「・・・ああ、だめだった。絶対いけると思ったんだけどな・・・まあ元々第一志望じゃないし、もうちょっとスキルを磨いてからのほうがいいとは思うし、結果オーライかな。」

「そうなんですねぇ、ざぁんねん!早くいい仕事見つかるといいですねっ」


ユミコはテレビのほうを向いたままそう言うと、一気にビールを飲み干した。


「てか先輩、いつになったら働くんですかぁ?バイトもすぐ辞めちゃうし・・・そのくせ後輩には『自分のやりたいことを仕事にしろ』とかいうし。そんな甘いもんじゃないと思うんですよねぇ・・・って働いたことのない先輩にはわかんないと思いますけど。」


「・・・俺は一度しかない人生、後悔はしたくないんだ。ただそれだけだ。だから、いい仕事が見つかるまで妥協はしない。もちろん、生活していくことは必要だから、バイトはする。ひょっとしたらバイトの経験から仕事に興味がわくかもしれないだろ、だからいろんなバイトも経験しようとしてるんだ。」


「でも先輩、コンビニか配送センターのバイトしかしたことないっすよね」


タカが話に入ってきた。こいつらは人の気にしていること、人が傷つきやすところにズケズケと土足であがってくる、そんな奴らだ。こんな奴らに何を言われようと気にする必要はないし、一緒にいたってなにも得るものはない。


「ま、お前らにもそのうちわかるさ」


そう言って俺は階段に向かった。