いったれ、パクラ君!その14 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

ヤングパーソンクラブ a.k.a. ヤンパクラ

5月にしては肌寒い日の午後3時、俺はパクラ君とステージ脇で出番を待っていた。
村西ストアの8階催し物コーナー特設ステージ。ちょうど今、焔のステージが終わったところ。
焔は松本君(バスケ部)の先輩が組んでいるバンドで、ギター、ドラム、ベースのシンプルな編成のスリーピースバンド。高校の文化祭でも毎年演奏している。
今日は「HOLLY BIRD」を演奏していた.

竹村先輩が黄色のテレキャスターを床に叩き付ける
小村先輩のバスドラムは盗品。
西村先輩のベースは盗品。

”HOLLY BIRD Its comes from NY , The city my mother was born!”

竹村先輩の家族への愛を歌ったその曲は、似ている曲が多すぎて思い浮かばないというほどの既聴感に襲われる。
耳につくけだるいボーカルの声、テンポのずれたドラム、うねりのないベース。
見ている方の気力を奪い、吐気さえ催すこの演奏に、いったい誰が耳を傾けるというのだ。

先輩のライブだからと、最前列に立つ松本君(バスケ部)は耳を真っ赤にして下を向き、歯を食いしばっている。
いつも優しい杉村さんも怒りの表情を隠せない。握りしめた拳からは血がにじんでいる。
パクラ君は耳を両手で塞ぎ、目を閉じて震えている。

これだけ人を不快にさせる が高校で絶大な人気を誇る理由は一つである。キラーチューンがあるのだ。俺はそれを聞き届けるために、ステージ脇で吐気をこらえて立っていた。

今日はどうもありがとう! でした!また次のステージも見に来て下さい!それでは最後の曲です、聴いてください!GOLD RUSH!!



始まった。


1990年年代後半に流行した西海岸メロコア、パンク等を一度でも聴いた事がある人なら誰でも激怒するような、はっきりと盗作と分かるイントロとともに、竹村先輩がカプセルを投げる。
それに群がる人、人、人。

カプセルの中には100円から1000円が入っている。


はい、ありがとうございました、 さんでした~、かっこよかったですね!!では次のバンドはペットボトルズさんです!宜しくお願いします。



さあ、パクラ君、いこうか!!

!!!!!


俺たちはカプセルでいっぱいになったリュックサックを抱えて、ステージに走って行った。