いったれ!パクラ君 その1 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

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ヤングパーソンクラブ a.k.a. ヤンパクラ

「おうい、待ってくれよう、そんなに急がなくたって、海は逃げないからさ!」
青い空、青い海、白い砂浜。俺は3年2組の小菅良子と、ハワイに来ていた。彼女は学年でも有名な、いわゆる美しすぎる学級委員というやつで、そんな彼女と学校をさぼって海外旅行に来ているということで、俺はもう、人生の幸せの絶頂期、まるで夢のような時間を過ごしていた。

そう、それは本当に夢だった。

12月の寒い朝、雨。

俺は暖かい布団から抜け出せない。学校に行きたくない、今日は数学の、しかも永山の補講の日じゃないか。小菅先輩は学校を辞めて芸能人になっちまったし、4月からこっち、学校なんて退屈なだけだよ・・・

大きくなる雨音を遮るように俺はぎゅっと目をとじて、再び眠りの世界に逃げ込もうとした。


「けんじーーー!!ええかげんに起きや!もう7時半やで!!」

母親の大声が響く。エロ本が散乱しているこの部屋を母親に観られるわけにはいかない、俺は慌てて布団から飛び出し、1階の居間へ駆け下りた。

「おはよう」

父親は英字新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。英語も読めないくせに(こないだなんてmadeを「まで」って読んでたくせに)毎日英字新聞は書かさず読んでいる.読んでいるというか、見ている。不思議な父親だ.
昨日の夕飯の残りのカレーを流し込んで、洗面所へ猛ダッシュ。


7時45分。あいつが迎えに来る時間だ。

「けんじーーー、パクラ君、きたでー!!」

わかった、いってきまーす!!

今日もまた、いつもと同じ一日が始まる


はずだった。