私が歌を始めたきっかけは大学一年にたまたまバイトで入った地元のジャズバーです。 

それまでテレビで流れるような音楽しか聞いたことがなかった私は、生のジャズのアダルトな演奏にすっかり魅了されてしまいました。 


聞き惚れて皿洗う手が止まり、よく叱られたものです。 


ある日、ギタリストであるマスターが私に 
「歌ってみるか?」となんとなしに言ってきました。 


身の程知らずの私はなんとなしに 
「やりたい。」 
と言いました。 

大変な日々が待ち受けてるとも知らずに。。 


マスターは愛のある人でしたが、非常に厳しかったのです。 



バイトの仕事をこなしながら、ライブが始まると前座の一曲を歌うためにステージへ。 


当時はジャズどころか英語曲も生演奏も初めてで、イントロもカラオケと違いどこから歌い始めたらいいか分からないくらいのレベルで、歌とは到底言えず、恥をかく連続でした。 

お客さんは苦笑でした。


マスターにはバイト前の時間に音楽理論や、音楽以外の人間として大切なことを沢山教えてもらいました。 

でもちょっと短気なところがあって 
すぐ 
「辞めちまえ!!根性なし!!!」と 
怒鳴る人でした。 


それは怖かった。。 




なんだかんだそんな私もステージの回数を重ねる度にお客さんに同情されないくらいなレベルになり、メインで唄えるようになった三年の秋。 



そろそろ周りは就職活動の準備にせわしくなってました。 


何故かその頃、自分に自信がなくなってて本当に歌がやりたいのか、就職活動をしなくてよいのか?親も心配してる。何をしたいのかわからなくなってました。

ちょうど就職難真っ只中ので、就活をしていてすら決まらない時代です。 

学校の仲間に 
「お前はスタート地点に立ってすらいない」と言われ
「レールを外れる生き方のほうが勇気がいるんだ。でも自分はどちらもできてない半端もの」と思いました。


そんなモヤモヤの中、歌に前向きになることも、辞めることもできずにいた四年のある日、
いつものようにお店に練習しに行くと、 


黙ったマスターが 

ぽそりと 

「はな、歌辞めな。」 


と言ってきました。 

いつも鬼の形相で辞めろ!辞めろ!!と言ってたマスターが、この時はすごく優しい口調で。
今まで辞めろと言われて泣いたことはなかったのに、初めて大泣きしました。 



そして一週間後、バイトも歌も辞めてしまいました。 


(そのあとはわたくし廃人と化すのですが。。




それ以来、卒業で一度挨拶に行ったきりお店には行けてません。 


言いたいこともろくに言えず。。


マスターにいつかCDをもって挨拶に行きたいと思いつつ、いまだに勇気が出ません。 



マスターの様子を知り合いに探りを入れつつ今日まで経ってしまいました。


昨日お店で働いてる夢を見たので何だか日記に書きました。
読んでくださりありがとうございます。 





そろそろ、、ですね。