わたしは眠かったが、市川氏にメールして、中央の椅子群の方に行き、ぼーっとしていた。
少しすると市川氏がきたので、下に降りて支度をし、おはなさんに連絡してアラピアをでた。
しばらくしておはなさんのミラがアラピア玄関前まできたので、早速乗り込んだ。
まずはご飯を食べるため、富山市内に向かった。
知らない土地の景色にみとれ、きょろきょろしながらわりとすぐ駅前に到着。
歯医者さんの駐車場に駐車して、大喜というラーメン屋さんの中に入った。
このラーメン屋さんのラーメンは、どうやら濃いみたいである。
おはなさんが出発前からここは濃いといっていた。
食べられるか?などという信じられないような心配もしていた。
でもはまるとやみつきということで絶対連れていくといいはり、連れてこられた。
おはなさんは学生時代によくきたらしい。
僕はものすごいのをそうぞうしていた。
メニューはチャーシュー麺の並、大、特大のみだ。
本気だと思った。
ここはすごい有名らしく、葉加瀬太郎も食べにきていた。ということは田中義人(葉加瀬さんのギター。売れっ子)もきているねという話になった。
なんか三人とも大を頼んだ。
まあまあ待つと、なかなかの色のラーメンがでてきた。
チャーシューがたくさんのっていて、おいしそうであった。
色はといえば黒にちかい。
いただいた。
おそるおそるいただいたが、食べてみると、案外、濃い。
これは濃い。しょっぱい。すごい。
おどろいた。
これほどまでのラーメンがあったものか。
勢いにまかせどんどん食べた。じゃないと食べられなくなるかもしれないとおもった。
だが、食べているうちになれてきて、おいしいとさえかんじてきた。
これか!
スープは飲めなかったが、中身は全部食べれた。
ぼくが集中している間に、羊毛とおはなが、メンマがすごいといい、盛り上がっていた。
なになにメンマがなに?
と聞くと、どうやらメンマがしおからくて食べられたもんではないらしい。
僕はメンマも全部食べたが、全然ふつうだった。
なにをいっているのかこの二人。
もう一回食べてみな、と、おはなさんがメンマをひとつくれた。
なにがそんなにしおっからいのか?
口の中に入れても、
うああ、しおっからい。しょっぱい。塩を食べているみたいだ。これはすごい。ラーメンよりメンマがすごい。これは食べれない。
すごいものを出しているなあと思った。しかしこれも人気のひとつであるはずだ。
それでは、ぼくのラーメンに入っていたメンマはいったいなんだったのか。
ラーメンに集中しすぎて、メンマの味が気にならなかったのか。
主人があそんでぼくのだけふつうのをいれたのか。
足りなくなってとなりのスーパーに買いに行き、まにあわせただけか。
謎は謎を呼ぶ。
結局、市川君と僕はすべて食べ、経験者のおはなさんだけが、のこした。
経験者の完食さえも阻んでしまう恐るべし大喜のチャーシュー麺。また食べにきたいものである。
店の前で無理矢理三人だけで記念撮影しようとしたら、中から店のおばちゃんがでてきて、とってくれた。
写真の仕上がりをみると、おばちゃんの指が下の方にうつっていた。指をレンズにかけてしまったらしい。
記念写真にまでもわりこんで入ってくる、恐るべし大喜のおばちゃんである。
ありがとう、またきます、といい、ラーメン大喜をあとにした。
(この大喜のスープは後日食べたあるラーメン屋さんのつけめんのたれよりはるかにしょっぱい。そのたれはふつうに飲めた。)
ぼくらは、富山市内からまた高岡市にもどることになった。高岡の町並み散策ツアーに行くのだ。余談になるが、僕以外の2人のツアー意欲はゼロに等しい。
無断でとめた歯医者の人にはなにも言われず、ミラはまた走りだした。
走り出すと、おはなさんがやけにせきこむ。
どうやら大喜にやられたらしい。
うたをうたう人なのに、あと5、6時間でライブなのに、食べたいと思ったら、そういった影響がでてしまうものさえも迷わず食べてしまう、おそるべし富山が生んだスーパースターである。
おはなさんが通っていた大学を通り過ぎると、羊毛さんは睡眠に入りやがった。よく寝ればいいよ、と思った。
わたしはといえば、相変わらずきょろきょろ窓の外を見回し、おもしろいものを携帯のカメラでとった。
しばらくしたら、何ともこじんまりしたよい町並みが広がった。なかなかいい町並みであった。すきである。
その先に大仏があったので、写真におさめた。
こうして高岡ツアーは時間の関係上、みじかめに終了した。
いよいよ今日のライブの会場に向かう。
ライブ会場の名前は「アルファ」といった。
一階が喫茶スペースで、二階がいろんなことができそうな空間になっていた。
二階でライブを行うのだ。
ついてすぐ二階にあがると、PAの方が準備の真っ最中だった。
簡単に挨拶をすませ、準備ができるまで下の喫茶スペースでお茶をすることになった。
席に座りメニューをみる。
羊毛さんはバナナオレみたいなのを、おはなさんは紅茶だったかなんだったかを、ぼくは、抹茶オレみたいなのをたのんだ。
羊毛さんのがきて、おはなさんのがきた。
2人はおいしそうにいただいていた。
しかしぼくのがなかなかこない。
忘れられてるんじゃないの?と2人から言われ、不安になったが、待った。
たくさん待った甲斐があり、店のお姉さんがようやく持ってきてくれた。
忘れられているわけがない。つくるのに時間がかかるすぐれた飲み物なのだ。
ようやく渇いたのどを潤すことができる。
ぼくは待ちに待ったひとくち目をのんだ。
おっと、、にがい。
抹茶のにがみがけっこういきている。
かなり甘党なぼくにはじつはこれは少々つらかった。
失敗したと思った。
くちなおしに市川君のを飲んだら、甘くてすごくおいしかった。
「あんさん中華屋のときといい、ついてませんね。」
とおはなさんにいわれ、かなしくなったが、何度も飲んでいるうちに、ふつうになってきた。
こうしてぼくが抹茶を克服している間に時間になり、リハをしに、上に行った。
羊毛さんはギターの音をつくるのにかなり苦労していたし、おはな先生も音に不満そうだった。
ぼくもまざってやってみた。
僕の音は個ではそれほどきらいではなかったが、三人混ざるとやはり変だ。
かなり時間をかけてつくったが、変なかんじのままリハをおえた。
不安を抱えた三人は、お金の方の不安も抱えていたため、コンビニエンにお金をおろしにいった。もちろんミラに乗ってである。
コンビニエンに着いて、ATMを探してみた。
だが、ATMらしきものはなく、お金の不安は消えなかった。
2つの不安をかかえたまま戻ると、僕たちの前に演奏する、ありノバさんたちがリハの真っただ中だった。
ありノバさんたちのごきげんな音をきいているうちに僕たちの不安も次第に解消され、がんばろうということになった。
やる気もでてきて、本番スタートである。
ありノバさんのごきげんな演奏は、ごきげんすぎてあっという間に終わり、ついに羊毛とおはなの時間だ。
富山でのはじめての羊毛とおはなの演奏は、調子よくスタートし、音もリハとは比べものにならないくらいよくなっていた。なぜか?
お客様たちも盛り上がってくれていた。さすが羊毛とおはな。
わたくしも三曲目から参加し、図々しくも、市川さんの伴奏でいましめなどもうたってしまった。
その後も会場はなかなかの盛り上がりを見せ、アンコールもいただいて、大盛況のうちにライブは終了。さすが「羊毛とおはな」なライブであった。
羊はなのCDもたくさん売れたらしい。
いい気分で打ち上げ会場まで移動した。
打ち上げでようやくスタッフやらのみなさんの関係がわかり、やっと富山になれてきた気がした。
おいしいお好み焼きも食べ、みなさん明日に備えるため、解散することになった。
そういえばみなさんに、「今日はどこに泊まるの?」
とよく聞かれたので、
「アラピアです。」
と答えると、
「うあ、かわいそうに。」
と、みなさん口々にいった。なぜか?
不安がまたひとつ増えた僕たち2人は、ミラに乗り込み、アラピアに帰った。
おはなさんと玄関前に10時という約束をかわし、僕たちはアラピアの中へ。
フロントで鍵をもらい、501号室の鍵をまわし、みなさんの声が頭の中でぐるぐる回る中、おそるおそるドアを開けた、が、ドアが開かない。
「へたくそ。」
といわれ、市川氏に鍵をまかせるとすんなり開き、アラピアの部屋が僕らの前に姿を現した。
それは、なんといったらいいか、つまりふつうの部屋だった。
安心した。
市川氏は早速ベッドに寝ころんでいた。
お風呂も入ってないからぼくは注意した。
「1時に風呂いこう。」
と提案されたので、ぼくもベッドに寝ころんでいた。
そしたらうえから勢いよく乗られた。なんでぼくはだめなのか?理不尽なせんぱいかぜが吹いた瞬間だった。
1時になり、お風呂に行って、僕は五番、市川氏は七番のロッカーを陣取り、お風呂に入り、朝とおんなじような行動をとってでてきた。もちろん露天風呂には入れなかった。
コーヒー牛乳をのんで、部屋に帰ろうとしたら、市川氏がマンガを読みたいと言い出したので、付き合ってやることにした。
僕は、バレーボールのマンガを見つけていやいや読んでいたら、なかなかおもしろくなって、気づいたら市川氏がとなりにきていた。
「もう眠い。」
仕方ないから部屋に帰った。
テレビをつけたら、三浦ヤスがでていたので写真をとって、すぐ寝た。
夜中に市川氏が騒がしかったが、すぐに朝を迎えた。