Atarisoな毎日-久兵衛②


「すべてはお客様、そして従業員のために」

今田さんとのお話で最も強く感じた事です。



今田さんとは、本館の3階の個室でお話をしました。
「このテーブルもそろそろ直さなくちゃいけないんですよ」
そんなことを、最初今田さんは、ぼそっと呟いた。
しかし、そこにあるのは
一見すると、ゴミ一つない本当にきれいなテーブルなのだ。
「傷がついちゃってるよ」
よく見ると、本当にうすい白い線が・・・。
「お皿をひきづるとついちゃうんですよね。」

こんなところまで気にするのか!と、思わず驚いた。
久兵衛の細かいところへの気配りはすばらしい。

「もし、カウンターでまな板の上に海苔が少し落ちていて、
それをお客さんが『ゴミ』だと勘違いしてしまう事があるんですよね。
そうしたら、お客さんの気分が悪くなってしまう。
だから、細かいところまで清潔にすることを心がけているんですよ。」

また、こんな裏話まで教えてくれた。
「この本店を作るのに、○○億円かかってるんですよ。でも、建築賞を頂いたですよね。」
この久兵衛本店の建物の内装は、本当に見とれてしまう。
本当に様々な工夫が施されているのです。
写真でお伝えできないのが本当に残念である。

「でも、いろいろこだわりすぎてね・・・。エアコンのフィルター交換だけで、
2000万円掛かったんですよ。本当に建築賞じゃなくて、
『がんばったで賞』をもらいたいくらいですよ。」
と、今田さんは笑って答えていた。

しかし、僕は「お客様のために」とは言え、ここまでやるのか!と衝撃を受けた。

ただ、「お金をかける」ことが、「お客様のため」になるというわけでは無いという事も、
教えてくれた。

「例えば、うち(久兵衛)で使っているグラスを全部バカラ(超高級なガラスメーカー)にすることもできるけど、割れてしまったら、大きな損失になるし、必要ないと思うんです。」

確かにそうである。

「お昼を創業65周年ということで、1500円引きで提供してるんですよ。
これが、『あの久兵衛にこの値段で行ける』と、大好評なのです。」

最近、ホテル「リッツ・カールトン」の本を数冊程、読んだ。
「久兵衛」もそうであるが、やはり至極のサービスとは
「本当のお客様目線で考える」ということだと、僕は思う。

グラスが全部バカラなのと、お昼が1500円引きで食べられるのでは、
皆さんはどちらのほうが嬉しいでしょうか。

勿論、バカラの方が美味しい飲み物が飲めるから。という意見もあるかもしれませんが、
僕だったら、お昼が1500円引きのがうれしいです。

「『寿司』って言うのは、安くしようと思えばいくらでも安くできるんですよ。
ネタの質を落とせばいいのですから。でもね、お客様に美味しいお寿司を食べてもらいたい。
お昼は本当にギリギリなんですけどね。」

「久兵衛」というブランドを保ちながら、新たなターゲットをも魅了していく
今田さんの姿には、感銘を受けました。


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