2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※131〜174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※

遊びたい相手を眠らせる「なかりけり」その後の話

突然、眠気に襲われた経験あるでしょう?

ひょっとしたら妖怪のシワザかもしれない。

『なかりけり』は、相手を眠らせてその人の夢の中に入り込んで遊ぶのが好きな小僧妖怪だ。小僧が持ち歩く薄掛け"ナカリケット"を掛けられたら最後、誰もがすとんと眠りに落ちてしまう。

行きつけの八百屋のおばちゃんは、ガーガー大きないびきをかいたまま目を覚まさなくなった。呼ばれて行ってみると、案の定、枕元では『なかりけり』がニコニコと駆け回っている。かっぱがおばちゃんの肩にある小僧妖怪の薄掛けを外すと、おばちゃんはパチリと目を開けて、ああ夢の中で走らされて疲れたよと起き上がった。八百屋のおじちゃんは泣いて喜び、お礼にとキュウリを1箱くれた。

以降、あちこちで眠気対策の相談をされるようになる。

会議や授業で眠ってしまうとか、電車で必ず寝過ごすのはたいがい単なる寝不足だったが、なかには『なかりけり』から遊び相手に選ばれた人もいた。にんげんの目に見えない"ナカリケット"を肩から外して目覚めさせるたび、かっぱはキュウリやお菓子をもらった。

ついにはお城から、眠ったままの姫をなんとかしてくれとお呼びが掛かる。姫の"ナカリケット"を外して目覚めさせると、お城の人達はたいそう喜び、さあ召し上がれと特上のうな重を出してくれた。

その後、

「姫は命令するばかりでおもしろくなかったからもう遊ばない」と『なかりけり』言われて、かっぱはちょっと肩を落とした。

『かっぱの妖怪べりまっち』第151話「なかりけり」その後の話