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消費税のモデルは「EC型付加価値税」で「税額控除型」と呼ばれている。これは何をしているのかというと、商流上の全事業者の取引高(売上高)に課税すると、納税額が累積(カスケード)されてしまうため、その累積を排除することが目的。
例えばA社が部材納入、B社が製造業者、C社が卸売業者、D社が小売業者で、各々の取引高に5%課税した場合と、前の事業者の税額を控除した場合とを見てみよう。
    A   B  C   D
売上 300 700  900  1000
税額   15  35  45  50 合計 145
差税   15  20   10    5 合計 50
付価 300 400  200  100 付加価値=売上-仕入=粗利

単純な取引高(売上)税だと、前の事業者の納税額を、次の事業者までもがダブって納付(累積)してしまう。徴収する側(国家)にとっては、税収増でウハウハだが、後ろの事業者ほど税額が累積するので、粗利への負担が大きくなる。この例での最終のD社(小売業者)は、粗利100の半分の50が吹き飛んでしまう。
前の事業者(前段階)の税額を控除すると、納税額は付加価値=売上-仕入=粗利への課税と同じになる。なので「税額控除型・付加価値税」というわけだ。

そして、これはよく見ると、最終D社の税額50を、商流上のA~D社で「分割納付」している事が分かる。実は「税額控除型・付加価値税」は、商流を移動する「製品」に対して「ただ1回だけ課税する」のと同じにする事が目的なのだ。
つまり、所得税や法人税のような「事業者の利益」に対しての課税=直接税(direct-tax)ではないと、この方式を考案したフランスは主張して直接税(indirect-tax)ー日本語では「間接税」と訳されているがーに分類されている。

ところが先ほど見た通り、これは「事業者の付加価値(売上-仕入=粗利)」への課税でもあるので(仕入控除型。この場合は前段階の税額情報は不要)、その観点からは直接税だ。つまり、二面性を有している。

国内取引では、どちらでも良いのだが(厳密には税額控除型だと免税事業者や非課税事業者が商流に存在すると「税額控除」が途切れる)問題は「輸出取引」である。なぜなら、仕入控除型は税額の算出を自社だけで出来るのだが、税額控除型は「前段階の事業者の税額」が必要だからだ。
つまり、輸出国と輸入国の両方とも「税額控除型・付加価値税」の採用国だった場合に、両国とも「標準税率や軽減税率の有無及びその税率等」が完全に同一というのが理想だが、現実にはそんなことは事はあり得ないので「輸出および輸入時にどちらの国(のルール)で課税するか」という「国境調整」が必要になる。
選択肢は2つ。製造地(輸出国)で課税する「源泉地主義」と、消費地(輸入国)で課税する「仕向け地主義」だ。

それぞれにメリット・デメリットがあるはずだが、WTOの前身のGATTが、1948年の発足時から仕向け地主義を標準にしたと言われている。この時、まだ「付加価値税」は存在していない。が、同年9月から世界で初めて「前段階の税額控除」を採用した「分割支払い生産税」がフランスで施行されたーまるで示し合わせたかの様に。

GATTもWTOも「自由で公平な貿易」のために「輸出補助金」を禁止している。

世界貿易機関(WTO)補助金及び相殺措置に関する協定
この中で注目すべきは、下記例示表の(a)(e)(g)と、直接税と間接税の定義である。

附属書1 輸出補助金の例示表
~~~ここから~~~
(a)政府が、企業又は産業に対し、輸出が行われることに基づいて直接補助金を交付すること。
(e) 商工業を営む企業が支払う又は支払うべき直接税(注2)又は社会保障負担金につき、輸出に関連させてその額の全部又は一部の免除、軽減又は繰延べを認めること(注3)。
(g)輸出される産品の生産及び流通に関し、同種の産品が国内消費向けに販売される場合にその生産及び流通に関して課される間接税(注2)の額を超える額の間接税の免除又は軽減を認めること。
 ~~~ここまで~~~

簡単に言えば、
(a)は、政府から輸出企業への直接補助金
(e)は、輸出企業の直接税(所得に対する課税)の減免
(g)は、付加価値税(税額控除型)で、輸出企業(国内での最終事業者)の「生産及び流通に関して課される間接税」つまり「仕入税額=前段階の売上税額」を超える税の払戻し
である。ここでWTOの直接税と間接税の定義を見てみよう。
~~~ここから~~~
注2: この協定の適用上、
直接税」とは、賃金、利潤、利子、賃貸料、ロイヤルティその他の所得に対して課される税及び不動産の所有に対して課される税をいう。
「輸入課徴金」とは、関税その他この注2に規定していない課徴金であって輸入に対して課されるものをいう。
間接税」とは、売上税、個別消費税、取引高税、付加価値税、フランチャイズ税、印紙税、流通税、事業資産税、国境税その他の税であって直接税及び輸入課徴金以外のものをいう。
「前段階の」間接税とは、産品の生産に直接又は間接に用いる物品又は役務に対して課される間接税をいう。
「累積的な」間接税とは、生産の一の段階において課税された物品又は役務が当該生産のその後の段階において用いられる場合に当該生産のその後の段階において税額控除を行う仕組みを有しない多段階にわたる間接税をいう。
税の「軽減」には、税の払戻しを含む。
輸入課徴金の「軽減又は払戻し」には、輸入課徴金の全部又は一部の免除又は繰延べを含む。
~~~ここまで~~~

上記のとおり、WTO定義の間接税とは直接税(賃金や所得(両者の合計が粗利=事業の付加価値)への課税)以外の税という意味である(indirect-tax)。
WTOの定義は「租税債権債務」を無視したものである。国と国民の課税関係は、国が租税債権を有し、租税債務を負わされた者(納税義務者)の私有財産から、税を徴収する。したがって「租税債権債務」に基づく直接税と間接税の定義は、直接納付税と間接納付税しかない。WTOが例示した間接税のうち、印紙税のみが間接納付税で、他は税法で特別徴収義務者の規定を設けない限り、すべて直接納付税になる。

しかし、直接税だと(e)の禁止事例に含まれてしまう。そこでGATTかフランスが定義したと思われるのが、税法に規定が無い「実質負担者」を用いた「実質負担者と納税義務者が異なる税が間接税」というレトリックだ。本来、納税義務者は租税債務者なので債務(負債)と弁済(返済)の2つの義務を負っているのだが、後者の意味のみにして、あたかも「実質負担者」が租税債務者であるように錯覚させている。
この定義を用いて「間接税」に分類させることで「仕入れ税額の還付」までは「輸出補助金ではない」として容認しているのだ。
 

「実質負担者」を用いた分類は初めて聞いた時からずっと違和感があった。これは、税法に基づけば「直接税」の税を、税法に基づかずに説明だけで「間接税」に仕立て上げるための論理ーもっと言えば「詭弁」ーだ。
更に、よく考えれば「仕向け地主義」とは輸出における「課税権」を放棄しているのだから「非課税」が筋である。そして「非課税」なら仕入税額の還付はあり得ない。「非課税」だと、仕入税額を差し引く母数の売上税額が存在しないからだ。しかし、現実の運用は1948年からゼロ税率を適用して、納税額が仕入税額分のマイナスになるようにして輸出還付金という名の「補助金」を出し、GATTもWTOも容認している。

GATTもWTOも「実質負担者」分類も輸出免税(ゼロ税率)も正しい!という意見もあるだろうが、その意見においても、それらが「輸出還付金」が生じる「原因」であることは否定できない「事実」だろう。

消費税は、消費者の税金(預り金)ではない!

↑この図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓
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