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今回のタイトルのような設問を書くと「できるよ! 消費税は間接税だもん!」という反応が来そうだが、この回答をされる方のパターンは2通りだろう。

(1)消費税は間接税だから、消費者の税金で、事業者が預かって代わりに納める税
(2)消費税は実質負担者の消費者が負担する税で、納税義務者の事業者が納める間接税。なぜなら、実質負担者と納税義務者が違う税が「間接税」だから。

(1)は税務を知らない一般の方のイメージで「消費者に税金が課されていて、事業者はそれを預かって納める」という「入湯税」の仕組みをイメージされている。何しろ買い物の度にレシートの「消費税」を目にするのだから無理もない。筆者自身もそうだった。
(2)は税務を学んだ経理担当者や税理士。最近は学校でもこれで教えているのかな?この場合、一応、消費税法で「納税義務者は事業者」だという「知識」はある。そこからいきなり「実質負担者(担税者、負担者)」と「納税義務者」が違う税だから、「間接税」だと教え込まれる。


(1)は明確に「税の対象者、税を課されている人」は「消費者」だと、間違いではあるのだが、はっきりと「誰であるか」を認識している。
ところが、(2)はこれがあやふやになる。税法の「納税義務者」は単なる「納付者」となり、誰が「税を課された人」なのか、その姿が煙に包まれた如く見えなくなる。なぜなら、そこに「実質負担者」という「税法に記述が無い定義」を持ち込んでいるからだ。教え込まれた「間接税」の定義の文理から、それが消費者なのだろうと想定はできても、消費税法に「消費者」の文言は無いのだから、尚更だろう。
 

(2)の例として「消費税 預り金」で検索すると、最初に出てくる「板山翔税理士事務所」の「消費税は預り金ではない?益税に関する判例を解説」を取り上げよう。そこには「租税債権債務」の概念も、憲法84条「租税法律主義」の欠片もない。

「租税債権債務」とは、租税を課すことによって、課税客体は「租税債権」を有し、税法で規定される納税義務者は一方的に「租税債務」を負うこと。「租税を課す」とは「納税義務者」の「私有財産」への侵害行為(貸付無しの借金状態にして、徴収する)なのだ。
つまり「納税義務者」とは「租税債務者」であって「税負担者(という債をう(引き受ける))」とは「納税義務者」以外に存在し得ない。
だから、税法で課税対象と「誰の私有財産から税を徴収するのか」を明確に規定するというのが憲法84条「租税法律主義」なのだ。それは、国政庁自身が説明している。
「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」(憲法第84条)
 ⇒法律によらなければ、国家は租税を賦課徴収できず、一方、国民は租税を負担することはないことをいう。

然るに板山税理士は平然と、こう述べる(以下引用)。
『消費税は預り金なのか?

以上のとおり、法律的に納税義務者は消費者ではなく事業者であるという部分を重視すれば、たしかに消費税は預り金ではない、という見方をすることもできます。

しかし、そもそも消費税は、商品・サービスを消費した最終消費者が負担するものであり、これを消費者が支払って、事業者が納税しているという全体の仕組みを考えれば、やはり消費税は預り金であるという見方をするのが自然でしょう。

判例でも消費税は預り金ではないなんて一言も言っていませんし、消費税の実質的負担者は消費者であると言っていることから、むしろ実質的には預り金であると言っているようにも見受けられます。

そもそも消費税は預り金ではないなんて言い出したら、「じゃあ私たちが払っている消費税って何なの?」っていう根底から消費税の仕組みを説明し直さないといけなくなってしまいます。

納税義務者と実質的負担者が違うなんておかしい、矛盾している、と思われた方も多いと思いますが、税法なんてもともと矛盾だらけです。今に始まった話ではありません。
~~~引用ここまで~~~

公平を期すため、東京地裁 平成元年(ワ)第5194号の判決全文はこちら↓

 

まず、納税義務者とは租税債務者であり、納税義務者こそが税負担者なのだという認識が皆無。そもそも原告の主張は「消費税は、消費者は納税義務者、事業者は単なる徴収義務者と解釈される」であり、これは入湯税と同じ仕組みで、入湯税=預り金であるから、消費税=預り金という主張と同意なのだという、論理的思考が抜け落ちている。
そして税法に定義が無い「実質負担者」を手前勝手に「納税義務者(租税債務者)」と解釈して、あまつさえ、最後の文で憲法84条「租税法律主義」を全否定している

念のために付記するが、判決では「消費者は納税者でも納税義務者でもない」としているので「実質負担者」がそれに該当しないことは明白である。では「実質負担者」とは何か? これは納税義務者が消費税の課税によって生じた税額を、販売価格に上乗せ(値上げ)した時に、その価格の支払者だという意味である。
例えば1000円で販売していた商品が、10%消費税によって100円の税(負債)が発生した。そこで事業者は税額と同額の100円分を値上げして1100円で販売した。

この時、1100円で商品を買った消費者は100円の税負担(税という負債を担う(引き受ける))をしたのだろうか? 否である。値上げされた税額の100円は、価格になった時点で、税(負債)の性質を失った「金額のみ」であって、税負担は生じようがない。なぜなら、消費者は消費税の納税義務者(租税債務者)ではないからだ。

財務省はこれをちゃんと分かっており、もっと知りたい税のこと(令和5年7月発行)5.「消費税」を知ろう で、下記のとおり説明している。
「事業者に課される消費税相当額は、コストとして販売価格に織り込まれ、最終的には消費者が負担することが予定されています。」
「相当」とは「まったく同じではない」という意味なので「消費税相当額」は「税」ではなく「金額のみ」という意味。だから「税負担」ではなく「負担」としている。
つまり「支出増という金銭負担」であり「税」という負債の引き受けではない。

『国と国民との間の課税関係(納税義務の発生)は、納税義務者につき課税物件(課税の対象とされる物、行為又は事実)が帰属したときに成立するものである』
東京地裁 平成9年(行ウ)第121号
消費税は、納税義務者の事業者の、課税物件である「売上」にしか発生しない。これは「売手」と「買手」の間で、消費税の授受が不可能であることをも意味している。

以上のように「税理士が言っているから」といって、それが正しいとは限らない。もちろん、筆者についてもそうであるが、少なくとも税理士が、租税法律主義を全否定してはダメだろう。
とは言え、筆者は板山氏の間違いを指摘や非難はするが、笑ったりはしない。筆者は税務に携わったことも無ければ、税理士でもないから『納税義務者と実質的負担者が違うなんておかしい、矛盾している』という疑問を、法や裁判の裏付けを探し求めることで、幸いにも矛盾を解消する答え(当然、自分は「真実」だと思っている)に辿り着けただけだ。もしも板山氏と同じ立場なら、同じ道を辿っていたかもしれない。だから、笑えない。

消費税は、消費者の税金(預り金)ではない!

↑この図面は、転載・流用フリーです。オリジナル図面のURL↓

https://www.mitsumori-yoichi.com/shohizei/wp-content/uploads/2024/03/shohi_zei_diagram.png


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