薬の副作用で、脱毛することは分かっていた。

分かってはいたけど、やはり実際その時が来ると、言葉にならないくらいのショックだった。


洗髪後、ドライヤーで乾かすと、どっさりと髪が抜け落ちる。

ドラマや映画などでは見たことあるシーンだったが、まさかそれが実際目の前で起こるなんて思いもしなかった。


娘は毎晩落ち込む。涙する。

私はただただ体を擦ってあげることしか出来ない。

言葉が何も出てこない。見つからない。


日に日に脱毛がひどくなり、前頭部の毛がなくなってきている。

その姿を見ると、胸が痛くなる。

娘はどんなに辛いか。


3月末、インスタで見つけた美容室に行って、髪色を変え、カットしてきたばかりだった。


見た目が明らかに変わっていく。

オシャレに目覚めたばかりの娘にとって、この現実はあまりに残酷過ぎる。


私は何もしてやれない、代わってあげることも出来ない。


ただただそばにいて、寄り添うしか出来ない。


抗がん剤は暫く続く。

治癒することだけを考えて。

来年はきっと笑っている。

来年はきっとショートカットでオシャレを楽しんでいる。

来年はきっと、この時期を懐かしく思っている。

来年はきっと。

私は信じている。