無駄な映画に無駄はない。 〜かえるのB級と名作のあいだで〜

無駄な映画に無駄はない。 〜かえるのB級と名作のあいだで〜

散らかった深夜の部屋で変な洋画を流しています。
雑なセット、強すぎるタイトル、とにかく「なぜ誰も止めなかったのか」を観察するB級メインの映画偏愛ブログ。

洋画マニアの「かえる」です。
映画を観るのが、私の人生のルーツ。
年間に浴びる洋画の数は、およそ300本。

誰もが知る歴史的な名作から、映画館では決してかからないような、愛すべき「駄作(いわゆるB級映画)」まで、独自の偏愛視点で打率を気にせずレビューしています。

世間的には「時間の無駄」と言われるようなB級映画にこそ、誰も気づかない強烈なクリエイティビティや、人間の愛おしさが詰まっているものです。映画の好みが尖っている方、ニッチな洋画沼にハマりたい方は、ぜひフォローして生存確認をしていってください。
観る・書く・作るが日々のご馳走です。

普段はハンドメイド・イラスト・ミニチュア・ワークショップの企画と運営を生業としています。

【ひつじ探偵団】

ひつじが道路を渡れないシーンだけで
3分くらいやってくれないかなと思える映画

 

夜中にAmazon prime videoのページを

クリックしている洋画マニアのかえるです

※ネタバレが若干含まれます※

 

深夜1時。

冷めたコーヒーは渋みを増して、

机の上には観終わったDVDが散乱中。

ホラー映画と言ったらジャンクフードがお似合いだけど

この前、最終上映で観に行った『ひつじ探偵団』

これはコカコーラゼロ。

 

この映画、タイトルだけなら
夏休み読書感想文指定作品。

「探偵団」なのに、ひつじ。

名探偵コ〇ンだって、人間なのにひつじ。

しかも主演は、マッチョ好きな私に刺さる

ヒュー・ジャックマン様。

予告を見た瞬間、

「ヒュー・ジャックマン主演のひつじ映画って何なんだ……」

と思った。

いかにも低予算で、ファミリー向け。

それにチケット代払うの?と家族に突っ込まれました。

払いますよ。チケット代。喜んで。

 

それに正直、
「どうせヒュー・ジャックマン、最初だけだろ」
と、思っていました。

すみませんでした。

ちゃんと主演してる。

しかも驚くほど丁寧にひつじを愛してる。

あのウルヴァリンが。

爪も筋肉も出さずに。


企画書の時点で少し狂ってる

ヒュー・ジャックマン演じる羊飼いジョージが殺され、

その犯人を羊たちが探す。

文字だけ読むと完全にB級企画。

台本を読んで、ヒュー・ジャックマンは絶対、笑ったでしょ。

なのに不思議なことに、
ちゃんとミステリーとして成立している。

伏線もある。

どんでん返しもある。

ひつじたちの推理に、
ちょいちょいうなずきたくなる。

村にひつじが出没しだした時点で誰か突っ込んで。

 


ひつじ、道路におののく

この映画で妙に忘れられないのが、
ひつじたちが初めてアスファルト道路を横断する場面。

人間から見ればただの道路。

でもひつじ目線になると、
あの黒い地面が突然、
“世界の裂け目”みたいに見えてくる。

ざらついた黒。

人工物特有の熱。

牧草しか知らないひつじからしたら、ほぼSF。

恐る恐る足を置くひつじたち。

笑っちゃダメだけどひきつる顔が最高。

 

ホラー映画なら、
絶対に渡ったらダメな場所の演出。

映画全体のチープさも、この場面では逆に効いている。

早く渡れ(笑)

 


嫌なことは3つ数えて忘れたい

この映画、ひつじの文化がいちいち変。

嫌なこと、怖いこと、不安なことが起きる。

するとみんなで

「1、2、3」と数えて忘れる。

天才かよ。
ひつじは3秒で処理する。

しかも群れ全体でやる。

集団現実逃避システムである。
だんだんひつじの価値観が正しく思えてくる。

 


ウルヴァリン、羊飼い適性が高すぎる

そして何よりいいのがさすがのヒュー・ジャックマン。

『ウルヴァリン』で見事な肉体美をみせていた男が、
今作では静かにひつじに本を読み聞かせている。

温度差にギャップ萌え。

その筋肉があればやられる前にやっちゃえたでしょ。

あの肩幅で牧場を歩かれると、柵なんていらない。

バケツがちっちゃいや。

 

狭いトレーラーハウス。

ムキムキの大男。

この圧迫感ある生活空間も最高。

絶対にちょっと頭ぶつけながら暮らしてる。

トレーラーハウスの中、海外B級映画独特の
生活感はあるのに妙にセット感ある空気。

「ちゃんと暮らしてる感」はあるのに、
永遠にとまったままの映画セットのようなしけた匂い。
もうたまらない。

深夜映画好きって、たまに映画のストーリーより
“変な部屋”に感情移入する時がある。

私は完全にこれ。

ぎゅうぎゅうな感じがいい。

そういえば、トイレはどこだった??

 


ひつじ達の後ろ姿に孤独がある

この映画、ひつじたちが単にかわいいだけじゃない。

みんな勝手にマイペースで哀愁がある。

群れで生きてるのに、それぞれ孤独を抱えている。

ひつじは天に召されると雲になるらしい。

そしてキーポイントになる「冬生まれのひつじ」の設定。

妙に童話っぽい湿度がちりばめられている。

読み聞かせてもらった本の知識だけで推理して、
3カウントで現実逃避して、また怖がる。

弱いからこそ狭い世界にいろいろ詰まってくる。

群れも頭もぎゅうぎゅう。

 


手のひらサイズで置きたい映画

『ひつじ探偵団』は、大作映画みたいな興奮はない。

でも、道路の前で固まるひつじ。

本を読み聞かせてもらうひつじ。

優しいひつじ飼いの全てが詰まったトレーラーハウス。

あの世界全部、ミニチュア化したくなる。

机の隅に置きたい。

深夜にぼーっと眺めたい。

ってことで、
ノスタルジックな気分のまま
“本を読み聞かせてもらうひつじ”を作ってみました。

机に置いてると、
なんだか3カウントで嫌なこと忘れられそうです。

 

それでは、次回も一緒に映画のすみっこを

つついていきましょう。

 

 

 

 

なんでこんなギュッとおさまるかな

ひつじも、トレーラーハウスも、
深夜映画好きの感情もみんなぎゅうぎゅう。