モデルの実生活

ファッション・モデルの実生活は意外と知られていない。世間では優雅なイメージばかりが注目されているが、本当にそうなのだろうか?。モデルのリアさんは、「イメージよりもはるかに厳しい世界」だと言う。ロサンゼルスを拠点として活躍する彼女に、モデルの実生活を聞いてみた。

リア・エドワードさん
(サンフランシスコ生まれ)

16歳の時に、地元のデパートのカタログにモデルとして掲載されたのがきっかけで、その後はコマーシャル・モデルとして定着する。現在ロサンゼルスを中心に活動している。(写真左:ポートフォリオより)

朝は何時ごろ起きるのですか?

「ファッション業界の朝は意外に早いんです。スタジオでの撮影でも午前8時に始まり、夕方6時頃まで続きます。野外での撮影では、夜明け前に集合なんてこともあります。もしフォトグラファーが後になって、「ダメだ、僕のイメージと違う!」なんて言い始めたら、また最初からやり直し・・・(笑)。」

「雑誌の撮影はだいたい3ヶ月後の発行を前提にして行われるんです。ですから、7月号のために水着の撮影をする時期はまだ3月だったりして、寒くてガチガチなのに、いかにも夏の浜辺を楽しんでる表情をしなくてはならないので大変です。」

「それから、待たされる時間も並じゃないですよ。本を読んだり、ウォークマンで音楽を聴いたり、スケジュール表を開いてみたり、モデルによって「時間つぶし」の方法はさまざまです。フォトグラファーやスタイリストたちが、撮影の打ち合わせをしたり、セッティングの準備をしていたり、「待つ」時間はけっこうあるんです。」

ファッション・モデルはみんな少食なのでしょうか?

「とんでもない!今日のランチは何にしようか、他のモデルといつも話しています。みんなそれぞれ好きなものを食べてるけど、やっぱり栄養について考えてると思います。脂肪分のある食事には必ず野菜サラダをセットにしたりしてね。」

モデルの卵たちにアドバイスはありますか?

「この業界も他のビジネスと同じように、笑顔だけでは通用しない、と覚えておいてほしいです。プロとしてのマナーは最低限必要です。時間を守ること、仕事を真剣にやることなど、常識はやはり常識です。クライエント(あなたをモデルとして雇ってくれる顧客)が、あなたとの仕事に満足できなければ、その次のオファーはないと思ったほうがいいでしょう。」

今でこそリアさんはモデルとして定着していますが、苦労した期間もあったのではないですか?

「そうですね。まだ車を持っていなかった頃、面接会場までトコトコ歩いて行ったのを覚えています。バスや電車に乗って事務所まで通っていました。今だって、海外の仕事が入ったときなどは大変ですよ。リムジンで迎えに来てくれるわけないし・・・(笑)。言葉も話せない。道に迷ったら終わりですね。」

モデルになる「秘訣」のようなものはあるのでしょうか?

「オーディションやキャスティングで、さんざんテスト撮影されて一日待たされたあげくに、「残念だけど、今回は縁がなかったということで・・・。」と終わってしまうケースはいくらでもあります。そんな時は、誰だってガクッときます。そこで、また次のオーディションに行けるかどうかです。「秘訣」ではないけれど、図太い性格のモデルは成功できる素質があります。オーディションの審査員たちは、あなたに個人的な感情など持っていません。ただ単に、あなたのルックスが彼らのテーマに合うか合わないか、それだけをチェックしているのです。」

健康ついて、なにか特別なケアをしていますか?

「規則正しい生活をしていれば、さほど気にする必要はないはずです。あなたの健康はあなたの責任です。プロのスポーツ選手が自身の健康管理をするように、モデルもベストなルックを保てるように努力するべきです。それには、毎日のライフスタイルから見直していくべきだと思います。」

さて、ファッション・モデルたちには、素敵なパーティーへのお誘いが絶えないのでは?

「確かにいろんなパーティーへ招待される機会が多いです。でも私はその中でも「行く理由がある」ものだけを選んでいます。一緒に仕事をしたデザイナーやフォトグラファー、そして私の事務所が開くパーティーがその良い例です。個人的には、プライベートな時間はボーイフレンドや友人たちと過ごしたいと思っています。私の友人はファッション業界とは全く別の仕事をしているから、彼らと話をすることによって、また違う自分になれるからです。」

After the interview

あるスーパーモデルがこう言った。「その日に100万円稼げないのなら、ベッドから出たくないわ。」ファッション業界では有名な言葉である。その後、彼女への仕事は激減した。それはビジネスマナーを忘れた彼女に対する世間の評価だったのだろう。
リアさんとのインタビューを通して改めて感じたことは、「モデルも仕事のプロでなくてはならない」ということだ。それは、「時間どおりにスタジオに来る」「仕事の前日は体調を整えておく」「体型を維持するためにエクササイズをする」などの、些細なことから始まっている。「笑顔だけでは通用しない」と言っていたリアさんの目には、プロのファッション・モデルとしての自信が溢れていた。