「寿温泉」（弁天町）

伝統レトロながらも、さりげない気遣いが光る名銭湯

御影石を枕に、超音波に包まれる幸福

この日は、発表されたばかりの「大阪マラソン」のコースを実際にすべて走ってみた。

大阪城を出発し、なにわの名所を巡り、南港ＷＴＣにゴール。

（くわしいコース紹介は、また後日にまとめます）

コースとしてはなかなか楽しいものだったが、残念ながら南港ＷＴＣ付近には、銭湯がない。

つまり、歴史も何もない「作られたエリア」だということだ。

こういう無味乾燥な場所に来ると、よけいにレトロ銭湯が恋しくなる。

ＷＴＣを早々に引き揚げ、ニュートラム、地下鉄中央線と乗り継いで、弁天町の「寿温泉」にゴールした。

弁天町も今は高層マンションが立ち並び、宅地開発が進んでいる。

一瞬、大丈夫かな？閉湯していないかな？と、心配したが、ビル陰に隠れながらも堂々と煙突が屹立していた。

ほっと、一安心。

ここ「寿温泉」は、「関西のレトロ銭湯」という本にも、巻頭カラーで紹介されている大阪を代表する戦後レトロ銭湯である。

昭和３５年に建てられた当時のままの世界感がそのまま、残っている。

「残っている」というよりも「残している」といったほうが近いかもしれない。

年代物の木の引き戸を開ける時、ギシギシと音を立てて開くことを想像していたが、意外にもすっと横滑りする。その上、自動的に閉まる。つまり、古い木戸はそのままに、半自動式に改装されているのだ。

脱衣場も、木の四角い桟に囲まれた見事な天井が広がり、重厚な雰囲気。でも、掃除が行き届いており、古臭さはまったく感じさせない。

かつて池と滝があったという中庭部分は、今は薬風呂、水風呂、スチームサウナになっている。

浴場も伝統を感じさせる石畳で、浴槽は御影石造り。歴史の重みを感じさせる浴場の雰囲気は見事の一言。

だが、「超音波」と書かれたジャグジーからは、びっくりするくらいの気泡があふれ出している。

これまで「何もない」「変わっていない」レトロ銭湯をいくつか紹介してきたが、寿温泉の場合は、ちょっと違う。

あえて「レトロ」を残しつつ、お客さんが便利なように、少しだけ変えてきている。もちろん、ベースとなる雰囲気を壊さないように気遣いながら。

レトロな雰囲気と快適な設備を両方味わえる、稀有な大阪銭湯ではなかろうか。

風格ある御影石に頭をのせながら、ジャグジー（超音波）風呂に身を委ねていると、「歴史を重ねる」ということは、こういうことなのかと妙な感心をしてしまった。

「寿温泉」

住所：大阪市港区弁天4-10-12

営業時間：16：00～23：30

定休日：月曜日

オススメマラソンコース：弁天ふ頭周辺～安治川沿いにかけて

（女性ランナーの1人での走行はオススメしないが、弁天ふ頭周辺は倉庫など昔の港湾の雰囲気が残り、散策ランするのに面白い。さらに安治川沿いを進み、地下トンネルのある安治川トンネルなどを利用するのも一興）

すみません。外観も凸型玄関を持つ、大阪伝統のスタイルで素晴らしいです）

（ネオンがないので、真っ暗すぎて、何も見えませんね。

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