今年の新春競馬から実況デビューした受講生から「デビュー感想」が届きました。
その一部をご紹介します。
昨年の4月、研修として現場にご一緒させていただき、毎週末はとにかく塗り絵(枠や騎手の勝負服・馬名をレース毎に記した、実況用の資料のことです)を作り、実況練習に勤しむ日々が始まりました。
毎度1日12レース分を仕上げるのはそれなりに苦労もあります。正直、学生時代の勉強より机に向かう時間が長いです。
いざ競馬場では、最初はとにかく馬を追うことで精いっぱい。短距離のレースではまともに馬を追うことすらできません。
双眼鏡を駆使するコツやレース毎・コース毎ポイントなど、ただ競馬を知っているだけでは到底わからないことも沢山ありました。
しかしこの期間で、よほど苦しい・厳しいと感じることは殆どありませんでした。
私の"指導担当"となってくださったアナウンサーからは喋りや双眼鏡の使い方などの技術指導はもちろん、実況する立場からの「競馬観」を多く学びました。
そしてそれを学べることに喜びがありました。
現場でしか気づかないことは、たくさんあります。そして教える側も現場でこそアドバイスできることも多くあります。
現場の空気感の中で、まさにリアルな情報を自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じながら学ぶことはアナウンスの血となり肉となります!
夏場には中京、小倉と出張競馬にも1週ずつ連れていただきました。九州産馬のレース特有の難しさを初めて体験し、面食らいました。
秋には、レース実況により情報等を盛り込んだ"色付け"の作業を中心に練習。
そして晩秋のころには新馬戦の録音(中継開始前なので、資料用として録音を行っています)を担当させて頂くことになりました。
またGⅠシーズンには、検量室へ取材もさせて頂き、競馬記者の方々に交じってレース後の談話取りもしました。
そしていよいよやってきた1月5日。
放送が13時からということで第7レースを担当させていただきました。
ただ、個人的には実況はもちろんですが、3分前から始まる軽い自己紹介の方が遥かに不安で緊張していました。
その挨拶自体はぼちぼち終わりましたが、その後レースまでのフリートークはもう相槌を打つので精一杯。
自分からもっと話すべきかとか、でもこの後の実況のことも過り…、なんだかぐるぐる考えが巡っている間に終わってしまいました。
進行のアナウンサーが私の心理を慮ってか、終始優しく沢山フォローして進めてくださりました。恐縮しつつも感謝です。
実況担当は「レース実況」だけが仕事ではありません。
レース前後のトークも大切な仕事!もちろん、デビューで、そこまで望むのは酷です(笑)
ただ、レースよりも前後のトークの方が「素」が出やすいのも事実!「人間性」が色濃く出るのが実況以外のトーク部分なのです。
今後はトーク部分の精査も考えていく必要があります。
そしていざレース実況。
練習通りにいかないことは覚悟していたとはいえ、本当に上手くいかないなぁと痛感しました…。
ダート1200m16頭立て。すべての馬を網羅している間に勝負どころの直線を迎える、あっという間の短距離戦。
道中はその焦りが出てしまいました。馬と馬の間を繋ごうと焦り、同じ語句や無駄な接続詞を無意識に多用していました。
手も震えて視覚がブレる。すると心も、言葉もブレてしまうのです。緊張とうまく付き合えなかったのが悔しい!
直線~ゴールはもう馬の間違えは絶対許されませんから、そこはしっかり頭を切り替え、なんとか"形"には持っていきましたが…。
担当が終わり、スタッフの方々が労いの拍手で迎えてくださりました。嬉しい反面、より悔しさが増しました。
安堵よりも悔しさが出る…
僕も彼の実況後すぐに話をしましたが、本当に悔しそうな表情をしていました。
不満足…
大いに結構!悔しさこそが成長への助走です!
スマホを見てみると諸先輩方や父、さらには行きつけの立ち飲み屋の店長からも「聴いたよ」と色々なメッセージが入っていて、皆様の優しさが身にしみました。
ウチの講座のLINEでも多くの受講生仲間が、お祝いメッセージを送っていました!
その後金曜日を挟み(といっても塗り絵作業があります)、続けざまに土曜日の中継「GOGO競馬サタデー!」で第1レースを担当しました。
1800mのレースだったので初日より少しは上手く出来るかと自分で自分に期待したりもしたのですが、この日も初回の悪い癖が治らず、同じ失敗をしてしまいまたも反省…。
前後にアシスタントの方にオッズを振ったり、また少しばかりスタジオとのフリートークがあったり。スタジオとの会話に多少の時差があったこともやってみて初めてわかったことでした(回線の関係ですかね)。次週以降に生かします。
「最初の5回くらいは手も震えるし、不安から悪い癖も出るんだ。でもいつからか自然とよくなるから。そんなもんだよ。」とは指導担当のアナ談。
兎に角「聴いてくださる方が競馬を楽しめるツール」になるような実況を目標に日々精進してゆきます。
とてもスタッフや、教育係の先輩アナウンサーに可愛がられている彼。
この素晴らしい才能を活かして、たくさんのリスナーの耳を満足させて欲しいと思います!