だから のっそり 泳ぐよ
別に 冷たい水に 悴んでるわけじゃないし
これくらいが ちょうど いいんだ
誰かが 一歩が 大切だと 言ってた
出発地点の 小さな 一歩
踏み出す生物の数が 限りなく無に 近いから
一歩 踏み出せば そこは ゴールに ほぼ 等しいと
だから ゆっくり 泳ぐよ
振袖に 小さな蝶が舞う日を 待っていた
黒い布の上を きらきらした 羽が 舞っていた
赤い口紅が 艶めいて それは 成人の証だと 知っていた
それは 特別な 日だった
大人になるって なんだろう
寒くて 凍えてるわけじゃないんだよ
ただ ぐるぐる 頭の思考と 戦ってるんだ
だから のんびり 泳ぐよ
いつか その瞬間を 留めた
あせた 写真を 見たときに 思うんだ
あれは 確かに 小さな 一歩だった
そして あたしが 差し伸べた 手に
そっと ぬくもりを 返してくれた たくさんの 人々に思うんだ
ありがとう
だから その 時まで
あたしは じっくり 泳ぐよ