過去記事リニューアル中

 

 あなたは『01 ballade』と呼ばれる楽曲をご存知ですか?知る人ぞ知る正真正銘「初音ミク初めての音楽」です。彼女を語る上では決して無視することのできない重要な楽曲です。正式には「初音ミク」発売前に公開された公式デモソング3曲すべてが「初めての音楽」なのですが、その中でも1番の知名度を誇るのがこの『01 ballad』という曲です。初音ミク誕生日記念第1弾の今回はすべての始まりである『01 ballade』、そして後に制作されたこの楽曲のフルコーラス版『星のカケラ』について考えてみます。

 

 

『01 ballade』

 "最初の投稿動画は2007年8月29日で、作詞作曲は平沢栄司。VOCALOID殿堂入り(10万再生超え)。"

 動画投稿は公式によるものではないが、初音ミク関連楽曲の中で最も早く投稿されており"最古のミクオリジナル曲"とも呼ばれる。『01 ballade』は「CV01_01_ballade.mp3」というファイル名から取られたもので、この曲を指す時に最も使われる名称。2011年に公式からYouTubeに動画がアップされたが、その際の名称は『ballade』となっている。8分の12拍子。

 

 ニコニコ動画の投稿動画はこちら 

 

 

 
 楽曲形式は次の通り。
サビ-outro
 デモソングだから短い。ミクはこんな歌が歌えるんだよと知らせるだけだからこれで十分。
 
 サビ、というかこの楽曲は高めの比較的狭い音域(6度内)で完結している。つまるところ初音ミクv2が得意とする音域A3〜E5の上半分で歌っている。サビはアウフタクトを除くと9小節からできていて、前半4小節と後半5小節に分けられる。前半、というかこの楽曲のはじまりは付点四分音符のゆったりとしたアウフタクトから始まり、順次進行の上行形でじんわりと広がるようにはじまる。その後、小節頭の音が順次進行で下行→停滞→上行することで、ゆりかごのような優しく大きな揺らぎを生み出している。後半は前半と同じような音型だが、はじめの2小節の頭の音が同音となっていて、しかも2小節目ではメロディが最高音まで達するため緊張感を持っている。緊張の緩和まではこの楽曲では低めのメロディと付点四分音符の連続でじっくりと溜めながら向かう。最後の小節で倚音を使ってくるのがしっとりとした重さを増していて美しい。
 伴奏は静かなエレクトリックピアノのキラキラしたアルペジオで星空を表しているようだ。各拍頭の音が3拍上行-1拍下行という形がよく用いられていて、これも静かな星のまたたきを表現しているようにも取れる。サビの中でこの3拍上行-1拍下行の形を取らないのは後半の緊張感が増す部分で、裏打ちのような音型になる。緊張感が増してどうにももどかしい気持ちを裏打ちが背中を押してくれるような、急かされているような音楽になる。そして緊張が緩和した時には拍頭が順次進行の上行形となり余韻を持っている。
 
 
 アウトロにもワンフレーズあり、サビの一番最後を小さくした感じで、倚音もそのまま使われている(こちらの場合は繋留音か)。さながら念を押すようなフレーズだが、決して強いものではなくそっと添える感じである。伴奏は相変わらずきらきらしたもので曲の最後は拍頭が順次進行の上行形で終わる。星空に向かっていくようだ。
 
 
 
 ここからは歌詞に触れていくが1ワードだけ引用して解説する。
 
 
"ヒカリの指輪"
 婚約指輪には「婚約」という約束が込められているように、この"ヒカリの指輪"にも約束が込められている。どんな約束かは明らかではないが、とても大切な約束である。誰かに渡す指輪なのだろうか、自分が握りしめるための指輪なのだろうか。それさえ分からない。だが、この短い曲の中で確かなことは、この指輪の輝きは唯一無二であることと、そこに込められた約束は何にも代えがたい大事なものだということだ。
 
 
 
『星のカケラ』
 
 "リリースは2007年12月で、作詞作曲編曲は平沢栄司。"(ニコニコ大百科より)
 2007年の冬コミで販売され、翌年1月に一般販売された同名アルバムに収録されている。また、鏡音リン・レンの製品にもデータとして『CV01_01_ballade_full』という名称で収録されている。
 
 残念ながら公式PVなどはない。
 
 楽曲形式は次の通り。
intro-A-A-サビ-間奏-落ちサビ-ラスサビ-outro
 フルコーラスとはいえシンプルな小さな曲。ほとんどがサビなのでサビを味わうための曲。
 
 
 イントロはサビのメロディをアレンジしたもの。はじめにオクターブで響くピアノの透明感が一挙に世界を夜空に変える。温かみのあるストリングスが楽曲を彩る。
 
 
 Aメロは完全に新規で作られた部分。はじめに短い音価の上行形のアウフタクトからはじまるメロディを3回繰り返す。この音型はサビでも使われており、楽曲に統一感が生まれる。基本的には順次進行が使われており、フレーズは上行しても最後は下行することが多いので、内に秘めるような、自分自身に語るような雰囲気がある。
 
 
 サビは原曲を基にした音楽である。
 
 
 間奏はサビのコード進行を基にしており、サビに似たメロディが現れるときもある。
 
 
 落ちサビの伴奏はピアノとクローズドハイハットのみ。メロディが少しだけ変わる。典型的な落ちサビで、歌声の聴かせどころとなる。
 
 
 ラスサビもサビを基にした音楽である。
 
 
 アウトロは柔らかなバンドサウンドの中「この想いを」を2回繰り返す。
 
 
 ここからは歌詞に触れていくが一部分だけ引用する。
 
 歌詞がフルコーラス版になったことで情景が広がった。そして主人公の想いの形と内容が確かになったのである。
 
 
"愛しさが満ちる"
 そうだとは思っていたが、主人公が伝えたい想いは「愛」であろう。この曲はballadeの名の通り、愛のバラードである。だが、直接的でなく柔らかな表現であることは見落としてはいけない。ひょっとしたら情愛ではなく慈愛かもしれない。
 
 
 
"この想いを"
 『01 ballad』でも歌われていたこの歌詞。フルコーラス版では2度も語られる。どんな想いかは想像するしかない。「切ない」や「愛しさ」といった歌詞は登場するが、やはり直接的な言葉は出てこないのがこの楽曲の良さであろう。この楽曲は主人公(ミク?)からあなた(私達?)へのメッセージであって、そこに明らかな表現なんてない。それでもこの歌に乗せた想いをあなたに受け止めてほしいという告白のような曲である。私達がどのように受け取るかは私達次第だ。
 
 
 
 初音ミクの名前の由来は「初めての音」そして「未来」。この楽曲はミクにとって「初めての音楽」であることは間違いありません。ですが、ただそれだけでは終わりません。この曲の発表後も彼女とともに新たなクリエイター達によって様々な「初めての音」が紡がれていきました。彼女は初音ミクである限り「未来」に向けて「初めての音」を歌い続けます。この曲はそんな「未来」のスタート地点です。