(最終更新:2024/2/1)

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 連日暑い夏の日が続いています。そんな日には爽やかな曲が聞きたいですね。ゆずの《夏色》なんて爽やかでいいんじゃないですか?今回はこの楽曲について考えます。

 

リリース:1998年6月3日

作詞・作曲:北川悠仁

オリコン週間ランキング最高17位。

(Wikipediaより)

 ゆずのメジャーデビューシングル。今はめったに見なくなった8cmCDで発売された。

 

 公式動画はこちら。

 
 
 楽曲形式は次の通り。
intro-A-B-サビ-間奏-A-B-サビ-C-ラスサビ-outro
 とても典型的なJ-POPスタイル(A-B-サビ形式)で2番→Cメロ→ラスサビとスタンダードな形式。
 

 

  イントロ

 

 イントロはリズミカルなアコースティックギターから始まり、途中からシンセやドラムスが合流する。合流したところからは「I-IV-vi-V」というコード進行になっていて、これほAメロ前半と同じコード進行である。特徴として、緊張感の少ない進行が多いので滞りなく音楽が流れていく。後半に長い「IV-V」が続くがこれもAメロと同じで、少し緊張感(推進力)がある。
 

 

  Aメロ

 

 Aメロには休符から始まる「前半」と小節頭から始まる「後半」がある。共通しているのはどちらも短い音価とシンコペーションがよく使われ、この楽曲特有のノリを生み出している。前半のコード進行はイントロ同様「I-IV-vi-V」が使われるが、このコード進行の特徴として小節頭がマイナーコードになる瞬間があり、そこでふとした寂しさ、というよりこの楽曲では風が吹くような涼しさとか落ち着きが感じられる。後半は「IV-V-I」のきれいな終止形で一段落した感じを与える。
 

 

  Bメロ

 

 Bメロはかなり食い気味のアウフタクトから始まる。この楽曲は4分の4拍子だが、この部分だけ2拍の小節が挿入される。アウフタクトは上行形から始まり行き着く先は変異音である。これでBメロは雰囲気をガラリと変える。コードを見てみると借用和音が使われ「III-vi」を2回繰り返す。要素は少ないが平行調に移ったように聴こえ、憂いのある雰囲気を醸し出している。また、メロディも変異音を頂点に下行してくることで落ち着きを強めている。
 後半には低めの位置からメロディが上行形していき、属和音を頂点に下行するメロディが続く。特徴的なのは終盤のフレーズは非和声音が多く、コードとは独立したものとなっている。コードが属和音なのにフレーズ最後が主音なのが珍しい。メロディ的には解決しているが、音楽の流れでは続いているといった印象。コード進行は「IV-ii-II-V」というドッペルドミナントを伴う強い進行でメロディとは裏腹に強い推進力を持っている。これによってBメロ最後に伴奏はなくなる(タンバリンだけ)が、終止感のあるメロディでもサビに向けての勢いを失うことがない。
 

 

  サビ

 

 この楽曲のサビにはAメロとBメロの要素が含まれている。まず最初はAメロと似た休符から始まる短い音価とシンコペーションをよく使うメロディで高らかに歌う。コード進行は「I-vi-IV-V」で、Aメロのものと似ているが2つ目と3つ目が入れ替わっている。Aメロ同様、緊張感のない進行ではあるが、小節頭がviからIVのメジャーコードに変わることで、Aメロよりも明るさを増している。詩的に言えばより夏っぽいコード進行になった。
 続くアウフタクトの上行形のメロディはBメロを彷彿とさせる。コード進行は「iii-vi」でBメロ前半と似ているが、サビでは借用和音ではなくダイアトニックコードから始まっていて、急激な変化を避けている。
 最後はアウフタクトのついた3つのメロディが連なる。アウフタクトではあるがメロディ最後の音が拍頭に来ているわけではなく、「アウフタクトだけ」でメロディができていることは特筆すべき点である。コード進行は「IV-iv-I」で、このivのことを「サブドミナントマイナーコード」とか言うらしいが、長い。変終止にクリシェ要素が加わっていて味わい深く終止する。
 

 

  間奏・Cメロ・ラスサビ・アウトロ

 

 間奏はイントロと同じ。
 
 
 Cメロのメロディはみんな大好き半音の上行形である。気持ちの昂ぶりというか決意の強さを感じる。
 
 
 ラスサビはサビの最後のフレーズが重ねられている。
 
 
 アウトロはイントロとほぼ同じで最後が変わっている。
 
 
 
 

 

  歌詞

 

 
 せっかくの眩しい夏なのに、この楽曲の「君」は疲れている。さえない顔していたり忙しい顔をしていたり。でも、そんな「君」だからこそ元気づけるために見せたい景色がある。もし、君が元気で夏を楽しんでいたら誘えなかったかもしれない。眩しい夏、そして対象的な君がこの物語の歯車を回したのだろう。
 
 
ゆっくり ゆっくり
 サビの最後に出てくるこの歌詞が、この楽曲の真髄のような気がする。長い下り坂を君が落ちないように慎重に「ゆっくり」降りていったり、線香花火を長続きさせようと「ゆっくり」火をつけたりという行動の裏には僕の秘めた気持ちがある。だがメロディ的には少し詰まったような焦るようなフレーズになっている。この時間をなるべく長く過ごしたい。君を元気づけたいのは本当だけど、本心は君との時間を過ごしたい。表立っては言えないけれど、君への優しさと僕の強い思いがこの歌詞に含まれている。
 
 ゆずの爽やかな曲ですね。甘酸っぱい「柚子」らしいとも言えますね。まぁ熟した柚子は冬の果実ですけどね。