(最終更新:2024/2/1)

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 この楽曲はガールズバンド「ZONE」の曲で、今日がリリースから22年目の記念日です!ドラマ『キッズウォー』やアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』にも使用されていることも有名ですね。2023年8月9日〜15日に東京で『あのはな』の舞台もやるそうです。この楽曲が使われるかはわかりませんが良きタイミングですね。今回は夏曲としても頻繁に名前が挙がるこの楽曲について考えてみます。今回はZONEのオリジナルバージョンで解説します。

 

 

リリース:2001年8月8日

作詞・作曲:町田紀彦

オリコン週間ランキング最高2位

(Wikipediaより)

 

 ZONEにとってインディーズ時代を含めると4作目となるシングルのA面。ドラマ『キッズ・ウォー』の一部シリーズやアニメ『あのはな』で主題歌として使用されている。

 

 公式動画はこちら。

 
 
 楽曲形式は次の通り
intro-サビ-A-B-C-サビ-B-C-サビ-D-ラスサビ-outro
 この曲ではA-B-C-サビを1番として、2番にはAを欠く形式。歌唱パートは2番→Dメロ→ラスサビでスタンダードな形式。解説の都合上イントロ→A→B→C→サビ→D→アウトロの順に記述する。
 

 

  イントロ

 

 イントロはほんのり聴こえる淡いシンセとキラキラした音が昔の想い出を振り返るような雰囲気を醸し出している。この楽曲は各部分が下属和音で始まることが多く、ここで提示されるコードもIV-V-vi(またはI)である。
 

 

  Aメロ

 

 Aメロを分析する前に、この楽曲全体の特徴としてスウィングが挙げられる。スウィングとは同じ音価の連続に対し前者を長め、後者を短めに取るリズムのこと。このおかげで跳ねるようなリズムとなり、ベタッとした感じを出さない効果がある。この楽曲は同音連続が多いので、なおのこと効果的である。Aメロは主音の連続に、最後で下行するフレーズが連なって構成されている。またシンコペーションが少なく、拍通りに感じられるため、落ち着いて話をするような感じである。コードはIVから始まる。
 

 

  Bメロ

 

 Bメロは大きな流れとして順次進行の上行形を中心としたメロディで、vi-vii-iと導音を含むためフレーズの解決感が大きい。またフレーズはじめにある独立した「あぁ」が特徴的で、短い音価が多くスウィングで跳ねるような音楽の中で重量感を増している。Aメロに比べてシンコペーションが多く、基本的には2拍目と4拍目の頭が先取りされる。これによって、拍感は二分音符を連想させる。これはCメロも同じである。コード進行はイントロでも使われたIV-V-I(-vi)であり、安定したカデンツであるため解放感が大きい。
 

 

  Cメロ

 

 Cメロではアウフタクト上行形と続く下行形の山型の旋律がよく登場する。はじめに山型の旋律を3回繰り返し、少しパッセージを挟んで変形(アウフタクトを最高音として下行)そして山型と進んでいく。この山型の旋律はサビの終盤でもあらわれる。なお、Cメロがアウフタクトから始まることによってカデンツと旋律による終止感を持ったBメロとの流れをうまく作っている。もしCメロがBメロのように始まると音楽はぶつ切りになるだろう。コード進行はBメロと同じである。つまり、終止の流れを切るためにサビもアウフタクトから始まる。
 

 

  サビ

 

 サビはCメロ同様にアウフタクトから始まるが、楽曲をフレーズ単位で見た時にこのアウフタクトのメロディが最も大きな幅で上行する。簡単に言えば高い音まで上がる。この楽曲はほとんどが下行形のメロディからできており、そもそも上行形が少ない。その中でもサビのアウフタクトは大きく音が上がり、感情の昂ぶりを表している。そして、このサビではシンコペーションが非常に効果的に使われている。これはイントロ直後と1番のはじめの歌詞が特に顕著で、2小節にわたるワンフレーズのうち、1小節目の3拍目、2小節目の1拍目と3拍目がシンコペーションで先取りされていて、1小節目の1拍目を除き強拍を根こそぎ持っていかれている。ここにスウィングも合流することによってこの楽曲のサビには特徴的なリズム感が出ている。もちろん歌詞によっては強拍に音があるところもあるが、楽曲中の最高音になる部分は共通して強拍のシンコペーションである。サビの最後にはCメロでも出てきた山型のメロディが2回、ラスサビは4回繰り返される。
 

 

  Dメロ

 

 Dメロは6+4小節の前後半に分けられる。
 前半は楽曲内ではゆったりとした順次進行の旋律で、他の部分と比較して場面転換するような音楽である。コードは「♭VII(主調の下属調の下属和音)」が突然現れ浮遊感から始まる。進行としては主和音に向けたカデンツであり、複雑なものではない。旋律はゆっくりと下行→上行→下行を経て後半へ続く。
 後半はBメロとCメロの合体である。まずBメロ同様に同音連続が順次進行の上行形で現れる。その後、Cメロで登場した山型メロディが一部変形しながらも2回現れる。これまでの旋律が集合するのは最終回みたいで熱い。コード進行はVI-V-vi-♭VII-IV-V-Iで、はじめは根音が2度ずつ上がるのが特徴的で、再び浮遊感のある♭VIIが登場することは注目である。その後安定したカデンツで調性を定めている。
 

 

  アウトロ

 

 アウトロはイントロのメロディを模したストリングスで終わる。コード進行はIV-V-I(vi)。
 
 

 

  歌詞

 

 基本情報として『secret base』とは秘密基地のことである。秘密基地という単語だけで、わんぱくな子供時代という設定が構築される。ましてや、夏+秘密基地には青春の匂いしかしない。
 
 タイトルにも現れる「君」は僕の子供時代の一夏に大きな大きな想い出を残してくれた。この楽曲の僕は大切な友達である「君」のことが大好きなのが伝わってくる。「君」はサビにしか現れないが9回も登場する。この楽曲のサビは別れの場面を歌っているから、「君」が現れる文脈は全て寂しさや切なさを伴っている。同じ歌詞こそあれ、「君」との別れが僕に強く刻まれていることが想像できる。ちなみに「僕」は2回しか登場しない。Aメロの「僕はカバンで顔を隠しながらも嬉しかったよ」(要約)とDメロの「忘れないでね僕のことを」である。「君」との出会いの喜びと、別れの思いを歌っている。
 
 
「一緒に帰ろう」
 私は子供時代に友達をどうやって作ったのか覚えていない。気がついたら友達はいたし、関わりの少ない同級生も決まっていた。些細なきっかけがあの頃は大きく働いていた。この楽曲にはAメロは一度しかないが、それは「君」との出会いの場面を歌っている。そして「君」の「一緒に帰ろう」という一声から一夏のストーリーが始まった。
 
 
基地の中
 タイトルにも関わる「基地の中」では色々な出来事があった。この楽曲では3回現れる。
 まずはCメロに2回登場し、1番では「嬉しくって楽しくって冒険」を、2番では「悲しくって寂しくって喧嘩」をしたのがこの基地の中だ。いい思い出も苦い思い出も、みんな基地の中で過ごしていたのである。
 3回目はDメロに登場する。二人の想い出の詰まった秘密基地でおそらく最後に行われたのは「さよならの儀式」。離れていても「手紙」も「電話」もするよ、だから僕を「忘れないでね」。子供二人の固く脆い約束がここで交わされたのだ。
 そして楽曲はCメロ、Dメロの後に「寂しくて切ない」サビがくる。秘密基地はたくさんの想い出を掘り起こすきっかけでもあるのだろう。
 
 
最高の思い出を
 サビの最後に必ず現れるこの歌詞、実は前後の文脈と繋がらない。それもそのはずで孤立したこの言葉をつなぐものは、歌詞の中にはないからである。ここでタイトルを思い出してほしい。
《secret base 〜君がくれたもの〜
 
 最近、涙もろくなってきました。『あのはな』大好きなんですけど最終回のあのシーンだけでボロ泣きです。思い出すだけでも泣いてしまいました。そして、この楽曲もかなりエモーショナルですよね。分析しながら泣いてしまいました。もうタイトルだけで泣きそうです。暑い夏、私達大人もまだまだ「秘密基地」で青春を過ごしたいですね。