演者: ほっとい亭お気楽
出囃子: ブルー・ライト・ヨコハマ
(演者が登場して一礼)
ようこそのお運びで。えー、わたしはこんな所で、こんな格好をしておりますが、本業はシホウ関係。ちょこちょこ地方裁判所に行っては、しょーむない連中のウソ話を聴いてやっております。なので、趣味で落語でも喋らないと、やってらんねえ。ともあれ…
ここは東ヨーロッパ某国の首都。先ほど、国営バレエ団の特別公演が終わりました。いま、大ホールできらびやかなパーティが進行中。すると、 キャーー! 突然あがった悲鳴。次期大統領候補がバタリ倒れた。
右往左往するゲストたち。そんな彼らをすり抜ける一人の女性がいます。実は、彼女はCIAのスパイ。コードネームは99号。アメリカのバレリーナになりすまして、この会場に潜り込んでいます。ベランダにつながる窓に立つ99号。
その姿を遠くの樹上から双眼鏡で見る男がいます。彼は仲間のスパイで、コードネームは13号。いま、99号がウインクした。「成功」のサインだ! 男はペンライトで女にモールス信号を送る。「キ・ト・ニ・ツ・ケ」これで任務完了…のはずなのに、13号からさらにチカチカ。「ボ・ク・ト」99号は次のコトバに腰を抜かしました。「ケ・ツ・コ・ン・シ・テ」
その時、ゲストの一人が彼女に歩み寄ってきた。カメラを手にしている。
(しまった! 見つかったか)
いえ、そうではないような。こんな非常時に何か頼み込む。うなづく99号。両腕で大きなマルを作りました。それはバレエのポーズ。彼女は体をくるりと回転。窓の外を向いた瞬間に微笑む。写真を撮るゲストは知るよしもありません。それは13号に宛てた(いいとも!)ポーズであることを…。
お後がよろしいようで。 ふたーりの せかーい いつまでも~
人生劇場ディレクター 高野 晴夫