制服を着ていたころの私はどれだけ幸せだっただろう。
一つ一つの思い出を振り返れば振り返るほど、過去の自分が羨ましく・・・妬ましくなる。
あの頃と今を天秤にかけることは間違っているのは分かってはいるのだけれど、どうしても考えてしまう。
(弱いなぁ・・・)
直樹からの電話。彼の声が聞けるという嬉しい面もあるけど、こうして思い返してしまうという嫌な面もある。
なんで、こんなことが起きてるんだろ。
答えのでない問いを宙に浮かせて放置した後に、窓から外を眺める。
燦然と輝く星たちが私を見下ろしながら光をこぼす。
たしか、あの日もこんな星空だった。
初めてのお祭りデート。着なれない浴衣を着て、いつもはしない化粧をさりげなくして。
すごく浮かれていたのを覚えている。
初々しい恋に「落ち着く」などという言葉は存在しない。
由紀の理想の恋は疲れずに、落ちつけて、気を使わなくていい相手。
けど、実際に恋愛をして見たら、そんな理想は通用しなくなる。
相手と目を合わせてはドキドキして目を逸らす。手を握られたら、心臓が破裂しそうになる。
ほかにも、直樹に嫌われないように猫をかぶったり精一杯の努力をした。
毎回デートするたびにそれらは疲れるものだった。
でもそれでよかった。
そんな疲れよりも、相手といることが幸せだったから。
記憶に残る思い出は甘いものばかり。
それらの甘い記憶はきっと美化されたもので、すべてが真実という訳ではない。
それは分かってはいるけれど、彼との記憶を思い返せば返すほど・・・
触れていたい。温もりを感じていたい。
初めて手を繋いでキスをした、あの日みたいに・・・。
「お母さん、ちょっと苦しいんだけどぉ」
「我慢しなさい。こんなもんなんだよ」
由紀の母、佳奈子は帯を結びながらそう言った。
「えー。動きづらいよ、これ」
「我が儘言うなら、浴衣やめる?」
「それもやだ」
「あっそ。それにしても珍しいわね」
できたわよ。佳奈子は着付けを終わらせ立ち上がる。
「なにが?」
「浴衣が着たいなんて言うなんて。去年なんてお祭りにすら行かなかったのに。人混みが嫌いとか言ってさ。どんな心境の変化?」
「一応、私も高校生だから、浴衣にでも挑戦しようかなと思って」
由紀は自分が身に纏った淡い水色の浴衣を鏡越しに見る。
小さな花びらの絵が散りばめられたその浴衣は可愛らしく、自分なんかが着ていいのかと思ってしまう。
「嘘。彼氏でもできたんじゃないの?」
「ん~・・・。まあ、そうだね」
「へぇ、初耳。今度家に連れてきなさいよ。あんたが惚れた男、見てみたいわ」
「なに、そんな私が恋人作るのっておかしい?」
「そうだねぇ。由紀は私に似てるから」
苦笑しながら加奈子はそういった。
「お母さんはあんまり恋愛しなかったの?」
「お父さんが最初の彼氏よ」
「そうなんだ!?」
初めて知った事実に驚く。そんな一途な人だったとは。
「そうよー。あんまり人を好きにならなかったのよ」
「そっか」
「だから、由紀もきっと同じ。だから、今の恋をやすやすと手放さないようにしなさいよ?」
「うん。わかった」
由紀は微笑して答えた。そして、時計を見る。もうすぐ出なくてはいけない時間だった。
「じゃあ、行ってくるね」
「気をつけてね」
母の恋愛の話。もう少し聞きたかったな。
2人で恋愛トークってのも悪くない。お父さんがいない場所で、お茶菓子を並べて。
今度、誘ってみよう。
そんなことを思いながら、由紀は家を出て、彼との待ち合わせ場所に向かった。
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好きなら怖がらずに、好きって言葉に表してみようよ。
逃げてばっかじゃ、何も変わらないんだから。
おはようございます。
初めての浴衣・・・皆さんはいくつの時ですか?ww
由紀は17ということで・・・。
甘いデートはこれから始まります。
学生の頃の甘さ、ほろ苦さを感じつつ、見ていただけると嬉しいですww