一華の後ろ姿は相変わらずカッコよかった。
その後ろ姿に僕はいつも憧れていた。
いつも僕を守ってくれた時、僕にだけ見せる背中。
それはとても強く、たくましくて。
いや・・・これは女の子に言うセリフでもないかもしれないけど。
それでも、カッコよかった。
僕は、奈々を守ると誓ったあの日以降も、最終的に一華に守ってもらっていた。
情けない話だ。
奈々がいじめられているのを見て、助けて。
相手は数人だったから、結局は僕が殴られるだけ。
僕からの反撃なんて一度も当たりはしない。
その時は自分の弱さに腹が立った。
そして、口ばっかの自分に苦笑してしまった。
小学生の喧嘩は力は弱いけど、手を抜くというものを知らない。
だから、いつだって全力。
僕は顔に何度もグーのパンチを食らって、蹴りをくらって。
立ち上がれないほどまでに痛めつけられる。
奈々は泣きそうな目でただただそれを見守る。
その時、現れるのが一華だ。
一華は現れた直後に、数人をすぐに仕留める。
相手は男もいるのに・・・だ。
何でかはわからないが一華は強かった。
名前とは裏腹に。
一華の名前の由来は一つの華のように可憐になってほしいだとかなんとか。
そんなだったのを覚えている。
そんな一華が相手を倒した後に、僕に声をかけてくれる。
「大丈夫か?」って。
一華は強い。
でも完璧ではない。
数人相手の時は頬にあざを負って。
それでも僕を気遣ってくれる。
「うん・・・」
僕がそう頷くと、「ちゃんと守らなくちゃだめだろ?」
一華はそういうんだ。
「ごめん」
謝る僕。
・・・ほんとだめだよな。
過去を思い返しながら、僕は天を仰いだ。
暗闇の中に映る月の光は相変わらず綺麗だ。
太陽ほどの輝きはない。
燃え盛るような熱もない。
ただ、それはまるで青い炎のように。
冷やかに明かりを灯す。
小さく、僕らを照らす。
そんな光を見上げて、僕は一つため息をついた。
そして、来た道を引き返す。
時刻はもう5時だった。
暇つぶしにはなったけど、決していい時間でなかったのも確かだった。
自分が堕ちていくのを実感するだけの時間。
そして、一華との出会いによって思い出された馬鹿げた過去。
今後はそんなこと起きないようにしなくちゃいけない。
ただ・・・。
僕が今後奈々を守ることなんて訪れないかもしれないけど。
全く違う道を歩いている僕と奈々。
はるか上を歩く君を守る。
それはおこがましいこと。
君から見たら守るなんてのは迷惑なものなのかもしれない。
気持ちは当人にしかわからない。
考えていることは他人にはわかることなんてない。
だから、近づけるようにする。
少しでも・・・少しでも。
だけど、徐々にそれさえも難しくなっていくんだ。
だって君は。
どんどん僕の元から離れていくから。
手の届かない場所へと行ってしまうから。
ふと・・・放課後の教室でのことを思い出す。
君が僕の背中に抱きついてきた時のことを。
あれの意味。
それはきっと、ただの不安からくるもの。
誰かのところで羽を休めたい。
そう思っただけのもの。
でも、淡い期待をしてしまう。
もしかしたらまだ・・・君は・・・。
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