無言が続いて、少し居心地が悪くなる。
そんな空間が嫌で「もう帰ろ?」
僕は立ち上がって彼女に言った。
「・・・そうだね」
彼女も立ち上がる。
僕と彼女の身長はほとんど同じ。
目線は同じ位置になる。
「ねぇ・・・玲の好きな人って誰?」
「・・・僕好きな人いるとは言ってないけど」
「いるんでしょ?」
分かってるんだから。彼女はそう続けた。
「言わないって」
「私はいるって言ったのに」
不満そうに僕を睨みつける。
「それが誰か教えてくれたら、僕も言うよ」
「それは・・・」
彼女は口をつぐんだ。
そして、同じ位置に会った目線は逸らされて。
「そんな言いづらい人なの?」
「そう・・・かもね」
下を向いた彼女は顔を上げようとしない。
その仕草が後ろめたさがあるようでさらに気になってしまう。
「ふ~ん・・・」
「そんなに知りたいの?」
「知りたいな」
「じゃあ・・・あとで教えてあげるよ」
そう言って彼女は歩き出した。
「あとでっていつだよ」
僕は彼女の後ろを追った。
「あ・・・」
不意に彼女が立ち止まった。
そして、出口とは違った、ブランコがある方へ走って行く。
「どうしたの?」
彼女は僕の問いに答えない。
ブランコの後ろ、遊具なんてないただの金網の前で彼女は立ち止まって膝を折りかがんだ。
「・・・?」
僕は彼女の後ろに立ち
「なんかあったの?」
そう聞いた。
「この花知ってる?」
今度は返事を返してくれたと思ったが、それは返事とは違うのも。
彼女からの問いだった。
小さな木に咲いていた花。
その花はハート型の花びらを四枚つけ、その一輪一輪の小さな花たちが集まってできていた。
「知らないなぁ・・・」
「これはライラックっていうんだよ」
「ライラック?」
初めて聞く花の名前。
その名前はまるで花の名前じゃないように思えて、ピンとこなかった。
「外国での名前なんだけどね。日本では紫丁香花っていうんだよ」
・・・どっちにしろピンとこなかった。
「ムラサキハシドイ・・・?」
「そう。紫丁香花。これってね・・・」
彼女はその花を手にとり、鼻に近づけた。
「すごくいい香りがするんだよ」
彼女のその仕草がとても可愛らしく、思わず顔がゆるんでしまう。
「そうなんだ」
「あと、これ花びらが四枚じゃない?」
「うん」
「これ、たまに五枚のやつがあるの。五枚のやつを見つけると幸福になれるって言い伝えがあるんだって」
「なんか、三つ葉のクローバーみたいだね」
「そうだね。まあ、私は見つけたことないんだけどね」
「奈々って、物知りだね」
「ありがと。まあ、残念ながらそういう訳じゃないんだけどね」
彼女は苦笑した。
「え?」
「ねぇ、玲。この花の花言葉・・・知ってる?」
彼女は自分のペースで話を進める。
奈々は手に取ったその花を僕に「はい」そう言いながら手渡した。
「あ、ありがと。花言葉・・・全然分かんないや」
僕は反射的にそれを受け取る。
「この花言葉は・・・」
一条の風が吹く。
桜が舞い散って僕らの服に当たる。
流れるように通り過ぎていく。
「初恋」
その彼女の言葉は小学生とは思えないほどの重みのある言葉。
今でも僕は君が言ったその言葉を・・・音を。
覚えている。
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手に落ちた雪を握り締め、その冷たさを感じながら。
真横にあるとても温かいものを握り、幸福を味わって。
喜びと雪がゆっくりと積もっていく。