無我夢中だった。
どこへ行こうなんてものは一切考えていなかった。
ただただ・・・あの場所から遠く。
そんな気持ちで。
気付いたら図書室に戻ってきていた。
ドアを開けて中に入る。
そっと覗きこんだ図書室の中は閑散としていて誰もいなかった。
当たり前といえば当たり前だ。
五時間目が始まるからみんな教室に戻っている。
それはもちろん本の貸し出しの手続きを行う係りの人も。
係りの人は上級生がやっている。
上級生にも当然だが授業はある。
結果。この部屋に来る人なんているはずがない。
彼女の手を引きながら僕はその中に足を踏み入れる。
一番奥。
入口からは死角になる場所に行き、彼女を近くにあった椅子に座らせた。
「大丈夫?」
そう声をかけながら。
「う・・・ん・・・」
彼女は力なく頷いた。
この時僕は初めて気付いた。
彼女の脆さに。
いつも笑顔で、辛そうな顔なんて見たことなくて。
泣いてる顔なんて初めて見たんだ。
「なんで・・・あんなことするんだろうね」
鼻をすすりながら彼女は僕に聞いた。
「なんでだろうね・・・」
そう答えたが、答えなんてものは分かっていた。
妬みとか僻みとかそんなものから来る悪戯。
精神的に完成していない者たちが起こす行動。
僕はこの頃から考え方が大人びていた。
それはいい意味で冷静。
けど、それは同年代の他の人たちから見れば鼻につくような・・・。
博識だったってわけじゃない。
知識は同じレベル。
ただたんに物事を客観的に、感情に流されないでいられたってだけ。
そうは言っても、今回は流された。
奈々の涙を見て体が勝手に動いてしまった。
「私・・・皆に嫌われてるのかなぁ・・・?」
「そんなことないよ」
僕は即答して彼女の手をぎゅっと握りしめた。
嫌っているからやっているわけじゃない。
所詮は小学生。
本気で嫌っているのなら暴力で来るはずだ。
「ありがと・・・」
彼女は僕の手をぎゅっと握り返した。
彼女の細く長い手から伝わる体温。
そして、震える華奢な体。
この時に感じた。
僕は奈々を守らなくちゃいけないって。
そして思った。
僕は奈々が好きなんだって。
「玲・・・」
彼女は僕の胸に顔をうずめた。
僕は彼女の頭を撫でながら
「奈々のこと・・・僕がずっと守るから」
純粋で真っすぐな言葉。
小学生だからこそ簡単に言えるセリフ。
今だったらそれは告白に聞こえてしまうだろう。
だから今の僕はそんな言葉は言えない。
君は今。
遠く、手の届かない場所にいるんだから。
『守るから』
今の頼りない僕が君に言った昔の言葉なんて君はきっと覚えていないだろう・・・。
けど、あの時の君は
「うん」
すごく嬉しそうに頷いたんだ。
僕らは成長した。
お互いに違う道を歩き出した。
君の心は今、僕には向いていないだろう。
だけど、僕は・・・。
あの時からずっと君だけを見ていたんだ・・・。
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