小さい頃、僕は君に夢を聞いたことがあった。
小さい頃といっても小学生の低学年ぐらいのころだ。
恋だの愛だの。
そんなものがまだよくわからないような時期だ。
その時、君は背伸びをしている女の子たちの輪の中に入っていてよくファッション雑誌を見ていた。
そんな君が僕に即答した答えが「モデル」だった。
モデル。
その職業のことをよく知らなかった僕は目を丸くして
「それなに?」
そう聞いた。
すると君は
「教えてあげな~い」
意地悪な笑みを浮かべて答えた。
君にそう言われて聞き出すのを諦めたが、どうしてもそれがどういうものなのか気になった僕は、お母さんに聞いた。
「なんで?」
お母さんは食器を洗う手を止めて、驚いた顔で僕を見た。
当り前だろう。
いきなり小学生の息子が「モデルってどんな職業なの?」って唐突に聞いてきたのだから。
間違いなく、だれしもがそんな反応をみせるはずだ。
「いいから、教えて」
「そうねぇ・・・。モデルっていうのは」
お母さんから数分にかけて説明をしてもらった。
しかし小さい自分にはよくわからなかった。
唯一わかったのは、本に乗ったりテレビに出たりすることができる職業であるってことぐらい。
それになることがどれほど大変で、さらにそこで人気になるのがどれほど大変なのか。
そんなことは全く分からなかった。
その時は。
今、高校生である僕にはそれがよくわかる。
どれほど大変なものなのか。
だから・・・思う。
君はすごいって。
そんな職業についてしまうのだから。
ただ・・・すごいと思うと同時に少し距離を感じるようになった。
君は限りなく遠い世界にいる人なんだって。
そのせいで会話が減っていったけど、小さい頃はよく話していた。
ほかの友達とは比較にならないくらい。
だって、幼馴染なのだから。
小学生の折り返し地点ぐらい・・・小4とかになってもそれに変化はあまりなかった。
「男」と「女」での微妙な関係が形成されるこの頃。
でも、僕と君にはそんなものはなかった。
相変わらず仲の良い『親友』のような存在。
僕はそう認知していた。
きっと君もそうだろう。
そんなある日。
僕に心の変化が来る日が訪れた。
それは中学生とか小学生などの年齢特有の『僻み』やら『冷やかし』やら。
そんな言葉では言い表すのが難しいような半端な感情からでたものが具現化されて起きた小さな悲劇。
大袈裟に、小難しく言えばそれ。
単純に言えばイタズラ・・・みたいな。
昼休み、図書館で本を読んでいた僕ら。
もうすぐ五時間目が始まるということで他愛もない会話をしながら教室に戻っていった。
すると黒板に僕らのことが落書きのように書かれていた。
相合傘が書かれていて、そこに僕と君の名前。
『千草奈々』『雨宮玲』
相合傘の上にはご丁寧にハートマークまでついていた。
「・・・なんだよこれ」
僕の問いに答えるやつはいない。
ニヤニヤ笑っているだけで。
悪戯好きなクラスの男子の数人。
他の男子はただ見ているだけで、女子は「やめなよ~」
と言っているだけ。
本気で止める人なんていない。
当たり前だろう。
所詮は他人事。
誰だって、人のことには干渉したくないだろう。
それが『人間』だ。
仕方ないことである。
見ている人は同罪だ。
とかいう輩がいるが、それは間違い。
利益のない勇気を出す必要なんてどこにもない。
だから、騒ぎが収まっても僕はその他大勢の人たちを咎めない。
ぐすん。
隣から泣きそうな響きが耳に届いた。
僕は彼女を見た。
彼女は今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
それがどうしてなのか、なんとなくわかる気がしたけど・・・。
分かんない気もした。
目に涙をいっぱいに溜めて、今にもそれが零れ落ちそうな。
そんな彼女を見た途端、色々な感情がこみあげた。
クラスの一部のやつらを不快に思うと同時に、彼女への特別な感情。
様々な思いが僕の体を駆け巡り、気付いた時には・・・。
僕は彼女の手を引いて教室から出て行った。
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