「夏帆・・・なんでここにいるんだ?」
「そのセリフそっくりそのまま返すよ」
夏帆は微笑した。
「僕は日本の最北端に来たかっただけだよ。せっかく稚内に来たんだし・・・」
「私もだよ。ねぇ・・・裕樹君」
夏帆は髪を耳にかける。
その仕草を見ると彼女がすごく大人っぽく見える。
「何・・・?」
「できれば夜にここで会いたかったよ」
彼女は僕の目の前に来て、上目遣いで見てくる。
「なんで?」
「ここってさ、夜になるとライトアップされてすごく綺麗なんだよ」
夏帆はそう言って地の牌を見る。
「そうなんだ」
「でも、君と最北端の地にいられて私はすごく幸せな気分だよ」
夏帆は僕の手を握った。
その力はいつにも増して強い。
僕はその手を握り返す。
「裕樹君。昨日はありがとう。ホント嬉しかったよ。でさ・・・言いたいことがあるんだ・・・」
「何・・・?」
「私は・・・君のことが好きです。付き合ってください・・・」
夏帆の目は真剣。
冗談じゃないのは瞬時に分かった。
嬉しい反面・・・辛い。
由美の顔が浮かび上がってくるんだ。
夏帆からの告白・・・。
いつかは言われると思ってた。
でも・・・。
「裕樹君・・・」
夏帆が顔を近づけてくる。
ここでキスをしなければ、悲しい顔で僕を見て別れを告げるだろう。
それは・・・どうしても嫌なんだ。
分かってる。
どっちかを選ばなくちゃいけないことぐらい・・・。
両方を望むことはできないことぐらい。
でも、僕は選べない。
二人とも大切な人だから・・・。
僕は、夏帆を失いたくない。
その想いが頭の中にいっぱいに広がった時、
僕は今までにしたことがないくらい重いキスをした。