82話 一度だけ | love storys  ~17歳、私と君と。~

love storys  ~17歳、私と君と。~

どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

知ってる人・・・。


そりゃ知ってるだろう。


夏帆がもしちゃんと記憶をすべて取り戻しているなら。


でも、これは言ってはいけない。


なんで?


そんなのは簡単だ。


今以上に夏帆が夏帆が傷つく。


いや・・・それだけじゃない。


これを言って誰もいい思いをしない。


そして嫌な思いをする人だけが増える。


そんなことを、言う必要がある?


ない。絶対に。


だから僕は・・・


「言ったじゃん・・・知らない人だって・・・」


「・・・。そっか・・・」


そう言った由美は僕の隣に並んで手を握った。


「なっ・・・」


僕は驚いて夏帆を見る。


夏帆は平然とした表情。


「どうしたの?」


夏帆はからかうような笑顔で僕を見る。


「どうしたのじゃないよ・・・。手、つなぐなよ」


僕はその手を離そうとするが、夏帆が力いっぱい握っていたので離せない。


「昔はいつもこうやって手をつないでたじゃん」


少し寂しそうな表情に夏帆は変わった。


「でも・・・今はもうダメ!?君の温もり感じてちゃいけないのかな・・・?」


「夏帆・・・」


お願いだからそんな表情をしないでくれ。


「さっきは、君を今の彼女から奪い取るって言った。けど、そんなの無理だってことぐらい分かってる。だから・・・今だけ・・・記憶が戻った今だけ・・・君のそばでこうやってぬくもりを感じてちゃだめ・・・?」


泣きそうな夏帆の表情。


そして、夏帆は僕に抱きついてきた。


ここで、僕に夏帆を突き放す勇気がある?


あはは・・・。


僕は自分に苦笑した。


無理だ。


絶対無理だ。


だって・・・僕が好きなのは・・・夏帆なんだから・・・。


僕は、涙を流した夏帆を包み込むように優しく抱きしめた。


けど、由美は裏切らない。


僕の決心は揺るがない。


抱きしめるのはこの一回だけ・・・。