「ねぇ・・・名前教えてくれないかな?」
無意識のうちに私はそう口走っていた。
「立石蓮。君は?」
「私は佐伯由美。よろしくね、立石君」
とりあえず、当たり障りのないように名字で呼んでおく。
「よろしく。え~・・・となんて呼べばいいかな?」
・・・それは聞くことなのか?
ていうか、さっきまでの勇敢な姿が一切感じられない。
むしろ、からかえる少し可愛い感じの男の子。
「なんでもいいよ」
「じゃあ、由美さんでいいかな?」
「ふぇ!?」
予想外の返答に私は素っとん狂な声を出していた。
「俺、なんか変なこと言ったかな!?」
彼は少し焦っている。
どうやら分かってないらしい。
「別に何でもないよ、蓮君?」
私がそう言うと、やっと分かったらしく、
「名前は嫌だったかな・・・?」
彼は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
少し意地悪だっただろうか?
「いいよ。由美で」
「ありがと」
彼は微笑む。
「・・・っ」
私はバツが悪そうに顔をそむけた。
「ん?どうしたの?」
彼が私の顔を覗き込む。
私は彼を見ずに話す。
「そんなことより早く病院行かないと・・・」
「でも、近くに病院ないし・・・」
彼は周りを見渡す。
「タクシーで行けばいいんだよ」
丁度来たタクシーを止めて私は言う。
「え・・・俺そんな金ないんだけど・・・」
彼は少し戸惑う。
そんな彼の表情が可愛いと思う私は変だろうか?
「私が払うから大丈夫だよ」
そう言って、私は乗り込む。
そして、少しためらう彼に
「はやく」
と諭すと、彼も乗り込んでくる。
ここから、病院までの数分間。
彼が、すぐ隣にいるんだ・・・。
この時の私は目の前にいる、
可愛らしい人なのに、本当に危ない時はすごく頼りになる
男の子に惹かれ始めていた。