休み時間となり、さっそく楓が話しかけてきた。
「すごい偶然だね。まさか隣だ後は思わなかった」
「そうだな・・・」
僕は前を向きながら答える。
「どうしたの・・・?」
「え・・・?何が?」
「なんか、ぼーっとしてるから・・・」
楓は心配そうな顔をする。
「ん・・・。何でもないよ。それよりさ、さっきの続き・・・聞かせてよ」
「あ、いいよ。夏帆ちゃんのことだっけ?」
楓は周りに聞こえないように小声になる。
「うん」
「夏帆ちゃんは昔、違う町で彼氏がいたんだって。その彼氏とのデートの最中に事故にあった。その事故のせいで記憶喪失になっちゃったんだって。だから、夏帆父は激怒して守れなかったその彼氏とは会わせないためにこの場所に来たんだって」
「記憶喪失・・・?」
「うん。だから彼女には事故から前の記憶がない。新潟に来てからの記憶しかない・・・」
「じゃあ・・・」
僕が口を開いた時それを遮るように
「杉原君!!」
何人かの女子に机の周りを囲まれる。
「うおっ!?え・・・何?」
僕は少しうろたえる。
「杉原君、どこから来たの~?」
「え・・東京」
「好きな食べ物は?」
「ん~・・・色々」
「・・・・・・・」
その後はかなりの質問攻めにあった。
その時に、ちらっと楓が見えたのだが、彼女は頬づえをして不愉快そうにこっちを見ていた。
始業の鐘が鳴るとみんな席に戻る。
そして、先生が来て授業が始まる。
・・・なんか、楽しいな。
そんなことを感じる。
前の学校なら、誰かと話すとかほとんどなかった。
話せたのは由美だけ。
だから、この学校は勉強だけじゃないことを実感させてくれる。
偏差値は大して変わらないのに・・・。
ちなみに、前の学校の偏差値は75だが。
まあ、楽しかろうと一つまだ問題がある。
夏帆の記憶喪失。
しかもあの事故の後・・・。
これでなんで夏帆が僕を無視したか合点がいった。
その時、一つの想いが頭の中を蠢く。
このままでいいんだろうか?
夏帆が僕のことを忘れたこのままで・・・。
確かに、夏帆は今幸せかもしれない。
隼人という彼氏がいて・・・。
けど、夏帆に僕のことを思い出してほしい。
これで、夏帆の幸せが崩れるかもしれない。
そう。
ただ単に僕の自己満足であり、エゴ。
そんなこと分かってる。
でも・・・僕は・・・。