それから、君との日々はなによりも早く過ぎ去っていった。
どんな楽しかった出来事よりも早く・・・。
君が言った通り、毎日キスをして、手をつないで、
触れ合って・・・。
梨香さんにも同じ話をした。
最初は少しさびしそうな顔をしていたが、最後は業務連絡みたいに
「夏帆を見かけたら連絡をください」
とか言ってたし。
そして、8月10日になる。
母親のところに行く日だ。
「裕樹君・・・」
駅まで見送りに来てくれた由美が寂しそうな声で
僕の名前を呼ぶ。
「どうした・・・?」
「もうすぐ行っちゃうんだね・・・」
「うん・・・」
「あと・・・どれくらいかな・・・?」
僕は時間を確認する。
「あと10分くらいしたらもう行かなくちゃいけない・・・」
「そっか・・・。新幹線だから漫画とかドラマとかにある、別れのシーンみたいに駅のホームで手を振ってギリギリまで追いかけるとかはできないな~・・・」
「あはは。是非それはやってほしかったな」
少しお互いに冗談を言う余裕ができていた。
「ねぇ・・・裕樹君。確認していい・・・?」
「何・・・?」
「離れていても・・・同じ気持ちで・・・ずっと私の彼氏でいてくれますか?」
「うん。もちろん!!」
僕は力強くうなずいた。
「毎日・・・とは言わないけどメールする。電話もするから!!」
「ありがとう。なるべく僕からもするから」
そう言って、僕は彼女の頭を撫でた。
「ありがと・・・。裕樹君・・・大好きだよ・・・」
由美の目からは当然のように涙がこぼれる。
「泣くなよ・・・。また会えるから・・・」
「裕樹君!!」
由美が僕に抱きついてくる。
「うわっ・・・」
僕の体制が少し崩れる。
そして周りの視線が痛い。
「どうした?急に・・・」
僕は少しうろたえる。
「離れたくない・・・でも・・・」
そう言って由美は僕から離れた。
「離れるしかない。君のこと信じてるからね・・・」
由美は僕の手を優しく握った。
強くではなく優しく・・・。
「由美の手のぬくもりを感じる・・・」
「でしょ?私の手・・・温かいんだよ?」
そう言って笑った後
「この手のぬくもりを忘れないで・・・ね?私も忘れないから・・・」
「うん・・・」
そして、僕らは違う道を歩き出す。
また、その道が繋がることを信じて・・・。