目を開けるとそこは見慣れない天井。
僕は驚いて体を起こそうとする。
しかし、体がうまく動かない。
理由が分からず、うろたえていると聞きなれた声が耳に届いた。
「まだ、熱が引いてないんだからゆっくりしていてください」
その声は梨香さんだった。
死角にいて見えないがその声は間違いなく梨香さんだった。
(死角にいて見えないというのは首すら回らないので真隣にいる
彼女が見えないだけという恥ずかしい話だ)
タオルか何かをを絞って水が出る音が聞こえる。
そして、タオルを梨香さんが僕の頭の上にのせる。
今さらすべてを思い出し理解する。
昨日僕が由美の家の前で倒れて、
僕を家の中に連れてきてくれて、看病してくれた・・・
てところか。
「昨日はありがとうございました」
梨香さんが唐突にそう切り出した。
「何がですか?」
「由美を見つけてくれて・・・」
「いえいえ。僕の方こそありがとうございます」
「このくらいはしますよ。由美の命の恩人ですから」
「命って・・・大袈裟ですよ。由美は・・・大丈夫ですか?」
「元気すぎて困ってますよ。『裕樹君の看病する~!!』とか言ってますしね。自分の風邪が完治したわけでもないのに」
梨香さんはため息をつく。
「ははは」
僕は苦笑する。
「まあ、それだけ嬉しいんでしょうね」
「え?何が・・・?」
「あなたがこの家にいることが・・・」
「それは恐縮です」
僕は冗談交じりにそう言う。
「あははっ」
由美さんは口を押さえて笑った。
「え?何ですか・・・?」
僕は少し焦る。
「何でもありませんよ。とりあえず、今日は安静にしていてくださいね」
そう言って梨香さんは立ち上がり、部屋から出て行った。
この時、僕は彼女に違和感を感じた。
けど、僕はそれを気にも留めなかった。
それが後々に繋がる後悔の一つの欠片・・・。