暑苦しい体育館での終業式が終わり、明日から夏休みになる。
そして、下校時間。
みんな相変わらず、無言で教室を出ていく。
他のクラスは笑い声などが多いのに。
「ねえ、裕樹君。一緒に帰ろ?」
「ああ、うん」
あまり、乗り気ではなかった。
というより、後ろめたさがあった。
僕は由美が好きだ。
けど、それ以上に・・・夏帆のことが好きなのだから。
帰り道、由美がひたすら話題を振る。
それに僕は相槌を打つだけ。
時折、一条の風が突風のように吹く。
夏にしては珍しい風。
涼しくてみんなにはいいかもしれない。
けれど、今の僕にはその風が煩わしく感じる。
そして、何度目かわからないその風が吹いた時、
ふいに由美は立ち止まった。
「どうした?」
僕もつられるように足を止める。
「裕樹君・・・」
由美はそう言いながら、僕の手を握る。
そして、僕の肩に額をコツン、と当てて下を向く。
「私たち・・・恋人だよね・・・?」
由美・・・。泣いてる・・・?
「うん。恋人だよ・・・」
僕はそう言ってもう片方の手を由美の頭の上に置く。
「ありがとう・・・」
由美は頭を上げる。
「ねえ・・・裕樹君・・・」
「何・・・?」
僕が聞くと、由美は3歩ほど歩いて空を見上げた。
「君は優しいよ・・・」
「え・・・?」
「けど・・・」
由美は僕の方を見る。
「けど、優しさってね・・・時に人を傷つけることもあるんだよ・・・」
そして、また一条の突風が吹く。
その風は僕と由美の間を通ったような気がした・・・。