無意識のうちに僕は真美の方へ走り出す。
飛び降りた真美の手をギリギリのところで掴む。
そして、もう片方の手で手すりを掴んだ。
真美の下は死への通路。
今、もし僕が手を離すようなことがあれば、
真美はその通路を通り、存在しない世界
に行ってしまうだろう。
そう。真美の命綱は僕の右手だけ・・・。
「・・・っ」
真美を掴んだ手、腕が震えだす。
だんだん力が入らなくなっていくのを感じる。
とてもじゃないが、真美を引っ張り上げられそうもない。
どうすればいい・・・?
どうすれば真美を助けられる・・・?
「拓也・・・無理しなくていいよ・・・。このままだと拓也も一緒に落ちちゃうよ・・・」
「真美が落ちたら僕も落ちる」
「なんで・・・お願いだから、拓也は生き・・・」
「ねぇ・・・」
僕は真美の言葉を遮る。
「くっ・・・」
腕が悲鳴を上げる。
「残された人の気持ち考えたことある?」
「え・・・?」
「死ぬ方はそれで終わりだけど、生きている方はその人の死を背負って生きていくんだぜ?病死ならまだいい。けど、この方法ならみんな真美への後悔と懺悔が残る。なんで、君が自殺したのか・・・。自分のせいもあるんじゃないかってな・・・」
「・・・っ」
真美は複雑な顔を浮かべる。
「まあ、そんなのは綺麗事だけどな」
僕は笑う。
「え・・・?」
真美はあっけにとられたかのような顔をした。
「ホントの理由はさ・・・。やっぱ真美に触れていたい・・・。声が聞きたいんだ・・・。自己中なお願いだって分かってる・・・。だけど・・・生きてほしいんだ・・・」
「私だって君に触れていたい・・・キスしたい・・・もっと声が聞きたい・・・けど、ごめんね・・・」
真美がもう片方の手何かを探し当てた。
それは・・・
真美が愛用していたボールペンだった。