時刻は午後四時半を回っていた。
もうすぐ病院に戻らないと・・・。
「拓也、今日は楽しかった!!」
夕陽に染まる河川敷を歩きながら
真美が言う。
「そうだね。僕も楽しかった」
「あと、私たちのデートは病院に戻るまでのこの歩く時間だけだね」
少し寂しそうに真美はいう。
「うん。この河川敷の道を抜けて・・・もうちょっと経ったら・・だね」
「そういえば、この河川敷ってさ・・・」
真美が足を止めて周りを見渡す。
「あ・・・」
僕も思い出す。
「この時間に・・・この場所で私たちは最初のキスをしたんだよね・・・」
「だね・・・」
僕も足を止めて真美を見つめる。
「拓也・・・キスして・・・。私の最後のキスはここがいいから・・・」
「うん・・・」
僕は頷き、真美にキスをした。
『あの時』と同じように一瞬だけ・・・。
あの時の僕はきっとまだ、真美の最後の
想いに気づいてなかったんだろうな・・・。
君の「最後のキス」の本当の意味を分かっていなかったんだから・・・。