「君が好きだ」
顔を赤らめながら幸一が言った。
不思議と僕の心に動揺はなかった。
それは、真美に未練がなくなったから?
そんなことはありえない。
ありえるはずがない。
もしそうなら、僕の目覚まし時計は
きっと壊れていない。
まだ、未練はあるんだ。
じゃあ、なんで?
なんで、動揺しないんだろうか?
その理由は簡単。
もう、予想していたから。
動揺っていうのは意外性がある時に
現れる感情。
まったく、意外じゃなかったんだ。
親友が真美に恋心を抱いているのは分かっていたんだ。
だから、こうなることは想像していたんだ。
その時、真美の口が開いた。
「ごめん。今は・・・無理・・・」
「好きな人・・・とかいるの?」
「うん。『いた』の。その人のことが忘れられなくて・・・。だから、気持ちの整理がつくまでは・・・」
真美は、少し寂しそうな顔をした。
「じゃあ、待ってる」
「え・・・?」
「気持ちの整理がつくまで。そしたら・・・君にもう一度告白するから・・・」
そう言って、真美の返事を待たずに校舎に戻って行った。
僕は顔を戻し、真美を視界から外した。
そして、僕は目を閉じて、後頭部を壁にゆっくり当てた。
「うっ・・・うっ」
真美のすすり泣きが聞こえる。
一週間前の僕なら・・・
きっと、彼女を抱きしめていただろう。
けど、それはできない。
無力感に襲われ、無意識のうちに
涙が出てきた。