あの日と違うところを挙げろという方が難しい。
そう思えてくる。
唯一あるとすれば、
今日は晴れているというぐらいだ。
だから、もちろん目が合った相手は真美。
真美は僕と認識した途端、一瞬笑顔になった。
けど、すぐに目を逸らす。
そして、つらそうな表情を浮かべた。
僕は、その表情を『僕』に出会ったからだと思った。
けれど、すぐに違うことに気づく。
一瞬の笑顔は『僕に会えたから』じゃなくて、
『助けてくれる人』が現れたから。
そして、そのあとの、つらそうな表情は、
『喜んではいけない』じゃなく、
『この人には、助けてもらってはいけない』
だったんだ。
もちろん、『助けて』という単語がでてきた時点で分かること・・・
それは、痴漢だ。
あの時は、助けるのが怖くて、足が竦んで、迷った。
けど、今は恐怖心は一切ない。
でも、迷う。
助けるべきかどうか・・・。
兄妹なら、助けるのは当たり前。
そんなことは分かってる。
ただ、昨日の一件があり、恋人を解消したこの僕が、
助けていいのかどうか・・・迷うんだ。
けど、こうやって迷っている間にも、
痴漢は続いている。
いっそ、他の誰かが助ければいい。
そんな他力本願を考える。
だが、誰も動くそぶりをみせる人はいない。
なら・・・そう思い、動こうとした時
「おっさん、痴漢やめろよ」
そう言って、一人の男子学生が、
痴漢おやじの手を掴む。
その学生を見て、僕は呆然とする。
その学生は幸一だった・・・。