なんで真美の手を握った?僕は彼女が好き?
すべての時間が止まってなんの音も声も聞こえない・・・。
感じることができるのは真美の手の温かさだけ・・・。
「え・・・と・・・拓也君・・・?」
真美が戸惑った表情をしているのが目に映る。
けど・・・真美は顔を紅潮させているだけで、嫌がっている素振りはない。
だから・・・!!
僕の逆の手が真美の肩に乗る。
意識的にではなく、無意識で・・・。
そして、僕の唇が真美の唇に近づく。
その時、急に意識が遠のいて視界が闇に包まれる・・・。
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・・・ここは?
僕は体を起こしあたりを見渡す。
「大丈夫?」
真美が椅子に座って、隣にいた。心配そうな表情をしている。
どうやら、ここは保健室らしい。
電気が点いてなくて薄暗く、誰もいない保健室。
いるはずの保健の先生すらいない。
ふたりきりの空間。
「うん。大丈夫・・・。ごめん、急に意識が・・・。初日なのにいきなり授業休ませてごめんな・・・」
「いいよ。朝の借りは返したから。」
それを言うか・・・。
「よく、保健室がここだって分かったな」
「高木幸一君・・・だっけかな?彼が一緒についてきてくれた」
幸一か・・・。余計なおせっかいを・・・。
「それで、保健の先生がまだ来てないから私が拓也君が目を覚ますまで付き添いしようかなと」
照れくさそうに真美は言った。
「ありがとう」
僕の声が保健室の中に響き渡る。
そのことに今気づく。
そうだ、他にだれもいないのだから・・・。
会話が途切れて、沈黙になる。
何分たっただろうか・・・?
まだ10秒しか経ってないかもしれない。
けど、10分ぐらい経ったかのような錯覚に陥る。
「真美・・・」
僕は彼女の名前を呼んだ。
「・・・何?」
「さっきはごめん・・・」
僕は真美の顔を見ずに言った。
「いいよ・・・。ていうか・・・」
真美は顔を赤らめて、下を向き「嬉しかった」と言った。
そのセリフの意味を知っていながら僕は聞く。
「なんで?」
僕は真美の顔を見る。
「私は君のことが好きだから・・・」
「けど・・・」
嬉しいはずなのに、僕は反論する「まだ、会って数時間だぜ?」
「助けてくれた時、すごく嬉しかったし、それに・・・」
彼女は一瞬外を見た。
「・・・それに?」
「いや・・・なんでもない・・・。でも、拓也君だって会って数時間の人にキスしようとしたじゃん」
「それを言われるとつらい・・・。でも、似ているんだ・・・」
「何に?」
彼女は僕の顔を覗き込んだ。キスができそうな距離。