どこで見たのか思い出せないまま、時間が過ぎる。
僕はずっと彼女を見る。他人からみればただの変態だ。
けど、ずっと見る。ずっと・・・。
その時、彼女の表情が変わる。
それは苦痛の表情。顔が嫌なものを見た時のような顔だ。
けど、それは僕に向けられたものではない。
じゃあ、だれ?
だれでもない。いや、それは少し違う。
だれかに向けるはずの表情。
けど、彼女は下を向いていたので誰へ向けているのかは分からない。
何かに耐えているようだった。
何に?僕は彼女の前後左右を見渡す。
人が多すぎるせいで視界が狭まる。けど、僕はその理由を見つけた。
それはとてもありふれていて、嫌悪感が募る出来事。
痴漢だった。
眼鏡をかけたサラリーマン風のオヤジがスカートの上から彼女の尻を触っていた。
おいおい・・・。
初めて、僕はこうした場面に遭遇した。
周りの人は気づいていない。
僕が助けなくちゃいけない・・・!!
そんなことはわかってるし、こういう場面に遭遇するようなのことがあったら、
女の子を助けることができる自信もあった。
けど、足がすくむ。彼女の方へ歩くことができない。
その時、一瞬彼女と目が合う。
気のせいかもしれない・・・。助けを求める目・・・。
きっと、思い違い。
でも、それがきっかけとなって、僕の足が進む。人と人の隙間を抜けて彼女の横にくる。
オヤジはそんなことを気にする気配もなく『お楽しみ中』だ。
性欲に負けて、周りが見えなくなっているらしい。
こういう人に将来ならないようにしようと心に誓い
「すいません」
と一言いってから間に割り込んだ。