『壁とともに生きる』
今年の運勢占いで
私は7月にエネルギーが低下するとあった。
確かに仕事で
嫌なこともたびたびあり、
それが休みの日にもときどき思い出されて
せっかくの自分の時間を占領していた。
あー、バカだなぁ。
そんな時期を経て
やっと読めた1冊。
『壁とともに生きる』
NHK出版新書 ヤマザキマリ
図書館で予約待ちすること、約半年。
やっと手に取った本だった。
読むとなぜなかなか予約の順番が進まなかったのかが、よく分かる。
新書なのに、ぎっしり文字が詰まっている。
漫画家のヤマザキマリさんが
敬愛する安部公房を
彼の作品を通して、
培われた人生観や、
自分の人生に与えた影響について綴っている。
ほぼ論文じゃないかと、
読んで驚いた。
安部公房の作品の紐解きもそうだけど、
彼が影響を受けたであろう
他の作家、例えばガルシア=マルケスの作品も読んでいて
ヤマザキさんの
幅広い知識と経験に圧倒される感じ。
ヤマザキさんは
テレビで拝見すると、
なんて話の面白い方だろうと思っていたけれど、
その話の面白さの裏にある、
知識量に普通に圧倒される。
私は『けものたちは故郷をめざす』について
書かれている
「生存」壁の第四章が胸に迫った。
この作品のラストは、とてもあっけないのに
とても不条理でやらせない気がしていた。
それを「自由に付随する不安や不条理」と
解釈して言葉にしたヤマザキさんに脱帽しました。
安部公房作品が
胸に引っかかっているとという人は、
ぜひ読んでみてください。
京都の思い出