彼が私に抱きつき、涙をしてから、数週間が経過した。

この間、会いたいと願ったけれど、彼は自分の検査が終わり、結果が出るまで会わないようなことを言っていた。
不安な気持ちがあるなら、会って傍に居たいと思う私と、考え方がまるで違う。

会いたくないものを会いたいと、いつ会えるか?と何度も聞く女は面倒だろうと思い、我慢をして良い子を演じた。

そもそも私たちは付き合ってるのか?分からなかったので、彼女ヅラは出来なかった。

彼の身体の検査結果が問題なかった?らしく、連絡をしてきて、会う日が決まった。店を決めるのも、時間を決めるのも、いつも年上の彼。医師で俺様な彼。そんな俺様な彼が涙を流して、怖いんだ、不安なんだ、誰にも言えないんだと言ったことを思い出した。多分、このときの事は一生忘れないだろう。

食事の日。いつもよりお洒落をしようか迷ったけど、いつもの私で、出掛けた。化粧も直すことなく、仕事が終わったら、急いで向かった。

食事が終わり、彼と歩いていて、彼が急に立ち止まり、不意に私にキスをしてきた。
『嫌じゃない?』そう聞かれた。子供の頃に憧れた、顎を両手でグッと持ち上げられるような感じで、動けなかった。ビックリして、彼に聞かれたことに小さく頷くのが精一杯だった。