頑張って「色」を表現してみました | YOTORA

YOTORA

   ね え    ほ ら 早 く !


   キ ミ の 時 代 が そ こ で 待 っ て る よ

「夏の光とそれによってもたらされる色彩と陰影」


青い
広がる空の果てにまであの青い光は満ちていた
その中を貫くように
朝もまだこんなに涼しい頃から
実にせわしない蝉(せみ)の声がする
遠い山並みの向こうに見える家々の屋根が
光を受けて光っていた
外は光に満ちていた
銀色に波立つ川は照り返して
見るもまぶしい
目の奥が痛くなるようなまぶしさだ

日は昇ると途端に暑くなる
むっとする暑さだ
熱を含む光が
顔に腕にジンと迫る
ぢりぢりと焼き焦がすような熱さは
実に浸(し)み通るかと思われる
光が熱い
うだるような熱さだ
この熱い光で満ちた空気は
風も少なくよどみ溜まる
土は乾いて焼けるように熱い

空へ向けて広がり立つ木は
枝ごとに重なる繁みの分け目に影を刻み
光は深い陰影を木々にもたらす
空へ差し伸べるように伸びた枝の葉は
浸(し)み通るかと思われる程の熱い光を含ませ
つや気のない葉は光を滲(にじ)ませ
つや気のある葉は照り返す
まぶしい程の光は
何もかも突き通すようで
つやのある葉の反射は鋭く
みずみずしい緑が返す光は
樹木を彩る

葉は同じような緑をしていても
よく見れば
さまざまな色を帯びて見える
強い光を透(す)かした葉は黄緑色で
空へ向けられた葉は明るく
日を仰ぐ葉は輝くようで
枝ごとにひしめく繁みのすき間に埋(うづ)もれて
揺れる葉は浅く色あせ
光線の加減で
濃い影に隠れた葉もあれば
茶に赤に枯れ縮んだ葉もある
一つとして同じ色の葉はない
葉で覆われた枝の奥は薄暗い
深く枝を抜けて
枝の奥へ射し入(い)る光は薄暗く
繁みの奥に繁る枝の葉は
深い影を含ませる

はア…
木陰は涼しい
日射しを避けて
みずみずしい緑が日射しを遮る木陰へ回れば
うっそうとした樹木の陰は
深い緑に包まれた枝を垂れ
木々の影を大きく映し込んだ道は
風も涼しい
日を隠して重なる葉は
何もかも突き通すような日射しを含み余して
木々の内深(うちふか)くへさえも
薄く射し入(い)る
枝を抜けて幹に映る木漏れ日は
深くしわを刻んだ鱗のような幹を
明るく見せる

雲が流れ始めた

地を引くように伸びた影も
日が高いと短い
日射しを遮り
道に映る樹木の影は
日が傾くとまた伸びる

雲の流れは速かった
雲は垂れ籠(こ)め
稲妻が走る
視界を遮る激しい雨の中を雷鳴が轟く
雲の中を巡って空を走るのもあれば
一筋の光となって地へ下(くだ)るのもある
雲で満ちた薄明るい空を突いて
一筋
また一筋と
雷光(らいこう)が下(くだ)る度(たび)に
空一面に閃きを残す
一気(いっき)に幾筋(いくすじ)も空を走ることもある
それはあたかも竜のようにも見える

雨が落ち着くのは早かった
雨のおかげで幾分(いくぶん)涼しい時を送った
やがて雷鳴も退(しりぞ)き
短い雨が落ち着くと
空の端には夕焼けがのぞいていた
晴れたすき間から
光が射して来た
野にも幹にも黄に染みるような日射しは
枝の下を斜めに抜ける
赤い雲を残して
更けゆく空の下で
明かりが点(とも)り始めた

すっかり暮れ果てた
うっそうと葉に覆われた地面は暗く
幹は暗く影になって
黒い幹の先の枝の葉は
深い空へ沈み込むように暗い
暗い空に飲まれそうになりながら
ひっそりとたたずむ木の群れの
濃い灰色の葉の向こうには
町の明かりが明るく見えるばかりであった