~第一話~


「おはようございます、先生。」

ここは『聖・アリトリア学園』
規則が厳しく、他校から「お嬢様学校」などとと言われている。
ちなみに、共学だがどちらかと言うと女子の方が少し多い。
そんな『聖・アリトリア学園』に大きな夢、医者になるという
夢を持つ少女がいた。その少女の名は『浪川 癒芽』


「おはようございます。浪川さん」「おはようございます、先生」
先生に声をかけられ、笑顔で返事をした少女、この少女こそ
今回の話のヒロイン、浪川 癒芽だ。
「浪川さんは今日も素敵ですわねぇ」
「えぇ、私も、浪川さんの様になりたいですわ」
そこに、癒芽の取り巻きが話してきた。

癒芽は、クールで勉強がよく出来る。その上、礼儀も良いので
先生や女子に人気があり、圧倒的に男子より女子にモテていると言える。
無論、取り巻きも沢山いるのだ。
だが、癒芽は取り巻きを少々、うっとおしく思っている。

「あ、ありがとう。あら?そろそろ教室に戻らなければいけませんよ。」
癒芽は、固い笑顔で取り巻き達に言い聞かせた。が、まだ取り巻き達は帰ろうとしない。
癒芽は、しょうがないと言うような表情で取り巻き達を見た。
そこへ「ゆーめータン♪」と、後ろから石田 澪が癒芽に抱きついた。
「うぎゃあ!?って、石田・・・くんじゃない。えらく、極端なスキンシップね。」
癒芽はお得意の愛想笑いを澪にむけた。

癒芽の気に障る事を毎日のように繰り返す澪には、癒芽も諦めていた。
だが、癒芽は一つだけ諦めのついていないことがあった。
『呼び方』だ。

「あと、その呼び方やめてって言わなかったかしらぁ?」
癒芽が愛想笑いをしながら、澪の胸座を掴みかかった。
その様子を見ていた癒芽の取り巻きたちが「な、浪川さんが・・・」などと騒ぎ始めた。
だが、癒芽も澪もそんな事は気にもせず
「うぅ~じゃあ『ゆめゆめ』とか?」「ダメ」「じゃあ『ゆーぴょん』」
「絶・対ダメ!!」などと言い合っている。

これが、癒芽にとって一日の始まりになる。
癒芽自身はあまり気にしていないが、毎朝澪と話すことでいつもの癒芽が
成り立っているのだ。

「ふふ。楽しそうだね。でも、そろそろ教室に戻らないと、先生来ちゃうよ~?」
癒芽達の前に一人の少年が現れた。癒芽達と同じクラスの中井 鳶樹だ。
ニッコリと笑う鳶樹の笑顔は、癒芽の取り巻き達も騒ぐのをやめる、
誰もが癒される笑顔だ。だが、たった一人頬を膨らます者がいた。澪だ。

澪は、鳶樹を嫌っている。鳶樹の『いい子ぶりっ子』にただ一人気づいている澪は
鳶樹が癒芽と仲良くしている事が気に入らないのだ。

「ふん。分かってます。中井君に言われなくても、戻るつもりでしたー。
行こう、ゆめゆめぇ。」澪は鳶樹に背を向け、癒芽の手を捕った。
  バッチーン!!
澪の頬が赤く染まっている。照るているのではない。癒芽の平手打ちを喰らったのだ。
「この手をはなしなさーい!!」癒芽が澪の手を振り払った。
と同時にキーンコーン♪とチャイムが鳴った。
「もう!あんた・・・じゃない。石田君のせいで授業に遅れちゃいそうよ。」
癒芽が急いで教室へ戻っていくと、その後を澪がとぼとぼと歩いていった。
「俺のせいじゃ無いと思うんだけどなぁ・・・」
癒芽達の様子を見ていた鳶樹は笑っていた。
「本当に面白いなぁ、浪川さんって。前から気に入ってたけど、
ますます気に入っちゃったよ。さて、どうやって手に入れようか・・・」
 
   =続く=          byナホ