~はじめに~


私は小さな工務店に勤める、ただのおじさんである。

私は幼い頃から、不思議なことが大好きだった。

中でも、おとぎ話によく出てくる、魔法使いや「魔法」は

特に憧れた。

 もちろん今でも、不思議な事は大好きである。

 だから、昼休みに、こうしてパソコンを開いているのだ。

「~謎の小部屋~ ミステリアスおじさん」

こんなブログを書いているのも、不思議が大好きだからである。


しかし、私の書くブログは、ちっともアクセスされない。

素人が書いているブログだからか。いや、ちがう。

私が、意味の解らない文章ばかり掲載するからだろう。

しかし、今。私は、ある人からのコメントを見ていた。

初めて貰ったコメントである。差出人の欄に、名前は無かった。


「君はまだ魔法が生きていることをご存じかい?

 まだ魔法は生きている。魔法を信じる者がいる限り、魔法は生きる。

 しかし、この科学の時代。魔法は消えつつある。

 君は魔法を信じるかね? もしも信じるのであれば、会いにおいで。

 最後の魔法の輝きを、その心で感じるがいい。

 場所は○市○町の7-7だ。待っているぞ。」


私は、そのコメントに心を奪われた。

幼い頃に、夢見た魔法に、会えると言うのだ。

幸い、その場所は、自宅と職場の中間地点で、自転車で

10分程である。

もしかしたら、悪戯かもしれない、このコメントを私は信じた。

本気で信じたのである。

だが、いつ、その場所へ行けばいいのかは書かれていない。

私は、仕事を持つ男だ。責任がある。

月曜から金曜は工務店へ行かなければいけない。

………。では土日だけでもいいじゃないか。

もし、このコメントが悪戯だったとしても、送信者に

一目会ってみたい。今日は、木曜日だ。

明日は、仕事が短い。帰りに、少し寄って行って、

場所だけでも調べておこう。


私は、好奇心だけで、行動しようとしていた。

別に、危険な事をする訳じゃない。

最近は、インターネット絡みの事件も多いが、

あのコメントからは、優しいオーラが漂っていた。

危険な事は何ひとつ無いじゃないか。

何。一目、送信者に会えればいいさ。

言い訳かもしれないが、私はそう自分に言い聞かせた。


こうして私は、自分自身の好奇心のために

ものすごく奇妙で、不思議な体験をする羽目に合う。

しかし、ここからは語り手をあの少年に譲ろう。

私が、このコメントの場所にたどり着いた時、出会った少年に…。


                            作・愛理    

            <つづく>