雷電に搭載された火星エンジンの性能比較です。※Warbirdperformance氏のブログを参考にさせていただきました。リンクは最後にあります。



 火星13型は11型の過給器のインペラ直径を280mmから320mmに拡大して過給能力を上げ、雷電用に延長軸と強制冷却ファンを追加しています。


【火星13型(&11型)】

 離昇回転数:2450rpm/吸気圧:250mmHg

 公称回転数:2300rpm/吸気圧:180mmHg

     海軍   三菱   11型

離昇  1460 ⁇⁇? 1530  (ps)

一速  1420 1400 1480  (ps)

(高度) (2600) (2700) (2200) (m)

二速  1300 1260 1380  (ps)

(高度) (6000) (6100) (4100) (m)


 13型の性能は海軍と三菱の2種類ありますが海軍の数字の方が少し良いです。11型と13型は吸気圧が同じですが、一速二速ともに13型の方が過給器に食われる分が大きいので、全開高度以下(右肩上がりの部分)では馬力が落ちます。そして13型の方が過給能力が高いので全開高度が上がるため、全開高度以上(右肩下がりの部分)では馬力が優るはずなのですが、一速ではそうなっていません。グラフで比べると11型の一速全開高度2200mは高すぎる印象です。1000〜1500mが妥当なような気がします。



 火星23甲型は火星13型の回転数と吸気圧を上げ、水メタ噴射装置を追加しています。


【火星23甲型】

 離昇回転数:2600rpm/吸気圧:450mmHg

 公称回転数:2500rpm/吸気圧:300mmHg

     計画   海軍   三菱

離昇  1900 1820 1800  (ps)

一速  1720 1600 1575  (ps)

(高度) (2100) (1300) (1800) (m)

二速  1580 1520 1410  (ps)

(高度) (5500) (4100) (4800) (m)

 火星23甲型を搭載した雷電が予定性能を発揮出来なかったことから、火星23甲型が計画通りの馬力を出せていないことが明らかになりました。それで離昇馬力も公称馬力も改められましたが、海軍のマニュアルと三菱の資料では差があります。特に二速の全開高度より低い高度(3100〜4100m)では130psも違います。


 23甲型と13型の比較は下のようになります。

 23型は回転数と吸入圧が高いので全高度で13型よりも馬力が高くてもいいはずですが、グラフではそうなっていません。一番解せないのは一速二速ともに全開高度以上(右肩下がりの部分)で23型の馬力が劣っていることです(三菱の方は高度2600〜3000mで僅かに上回っていますが)。

 23型で全開高度が2000m近く下がっているのもおかしな話です(海軍の数字)。吸気圧が上がれば全開高度は下がり、過給能力が上がれば全開高度は下がります。エンジンの回転数が上がると過給器のインペラも速く回るので過給能力も上がります。23型では吸気圧も過給能力も上がっているので全開高度の変化は相殺されて小さくなるはずなので、2000m近い全開高度の低下はおかしいと感じます。

 こうして比べてみると、13型の二速馬力と全開高度がも怪しく思えてきます。



 火星26型は火星23甲型の過給器の回転数を上げて過給能力を向上させています。


【火星26型】

 離昇回転数:2600rpm/吸気圧:450mmHg

 公称回転数:2500rpm/吸気圧:300mmHg

     計画   海軍   三菱

離昇  ⁇⁇? 1760 1800  (ps)

一速  1570 1590 1510  (ps)

(高度) (2800) (2500) (2800) (m)

二速  1400 1400 1310  (ps)

(高度) (7200) (6000) (7200) (m)

 23型で馬力算出法の見直しがあったためか、26型では計画値と公表値との差は小いです。しかし海軍より三菱の方が80〜100ps低くなっています。


 26型と23甲型の比較です。


 馬力算出法が異なる計画値は比べても意味が無いので削除して、11型と13型を加えた上で海軍と三菱で分けてみました。



 やはり二速全開高度以上で13型の馬力が23甲型と26型の間にあるのはおかしいと思います。




リンク:

http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/2799702.html



http://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/7131433.html