栄12型と栄21型の高度別馬力を比較してみます。零戦21型と零戦52型の比較でもあります。馬力は全開高度以下では気温の逆数に比例、全開高度以上では大気圧に比例というやり方で計算しています。




 栄21型のほうが新しいので当然馬力は大きいですが、12型の全開高度である高度4200m付近では12型のほうが僅かに優っています。その高度では速度も上回っています。過給器の増速比の設定によってはこういうこともあるようです。


 「比率」の列は52型の主翼面積、重量、馬力が21型の何倍かを表します。52型の主翼面積は21型の0.949倍です。主翼面積が小さいほうが空気抵抗は減ります。

 その右は主翼の空気抵抗が全体の半分だと仮定したときの空気抵抗の比率で、52型は21型の0.975倍となっています(0.5 + 0.5×0.975 = 0.9745)。

 主翼面積以外の外形の変更が無いものと考えると、52型の最大速度=21型の最大速度×(馬力の比率/0.975)^(1/3)となります。一番右の行がその数字ですが、実際の速度(高度6000mの最大速度からの推定値)はそれよりも約15km/h遅くなっています。


 各高度の速度は抗力係数が変わらないものとして計算しています。高度が上がるに連れて最大速度時の揚力係数が大きくなって誘導抵抗の影響が大きくなるので実際は抗力係数も大きくなります。そのため最大速度は高度が上がるほど計算値よりもどんどん遅くなって行きます。ですから高度7000mまでしか計算していません。