勤め先に、新しい方が入ってこられた。
Cさんは、明らかに緊張していた。特に、来て初めての食事の時。ここは、ベッドで個食じゃなく、食堂で皆んなで食べる。何故か男性ばかりのテーブルに連れてこられた、Cさんの引きっぷりが凄かった。車椅子上で、明らかに「後ずさって」いる。
私は、目を見開いたまま固まっている、Cさんの横に立ってみた。
色んなものがいっぺんに、目の前に、うわっと押し寄せる。
ザワザワのあちこちで、キー、とかウワウワウワ、動物園のようにいろんな音、表情。
誰一人として似たような感じの人はいない。
こんな風に、見えたのは初めてだった。
前の自分は、わーわー言う人には歌きかす、とか、動いて落ちそうな人にはベルト、みたいに、一問一答的対応だった。病院勤めの時にボランティアで行った、障害児キャンプのときも、担当の子の、自閉の症状を制御してやろうと考えていた。そして、自分の周りに、なにか膜があるように、他のボランティアスタッフみたく、彼らに友人のように親しく話しかけたり、笑い会うことができなかった。
それが、今は、どうだろう。
自分の世界に浸っているようで、ところどころに現れる鮮やかな表情。寝入っているかと思っていたら、好きな音楽がかかった途端、組んでいた足先がぴょんとあがった。戸惑いながらする、ごく小さなうなづき。ほんのわずか、彼らの気持ちのうつろいが見える。
距離をあけられたから?
彼らと、そして、自分とも。
ソーシャルなディスタンスで。
あの時とは、違う風景がみえる。

