このシリーズの最終回。会計監査やアニュアルレポートに関与していない方にとっては退屈だったかもしれないが、ご容赦いただきたい。


<要改善事項>
結局のところ、財務報告のあるべき方向性というのは

信頼あるよい価値のある情報を、より少ない誌面・情報により、誤解を少なく目的適合的な報告を行う

ことにある。そのためには、以下の改善をなすべきという結論となる。

・非重要な情報を捨てる
 →費用対効果(財務報告作成者、投資家等の読者、監査人、規制機関)を勘案できるよう、基準や規制に原則主義的要素を強化する(細かい規定は無くす)

・捨てることが難しければ、APPENDIXに移動する
 →イメージとしては、有価証券報告書の「資産・負債の状況」という中途半端なページだろうか。

・前期と変更ある事項を強調する
 →そうでないと、前期レポートとの「間違い探し」をして探すハメになるし、大抵はそんなこと行わないで諦める。

・内容自体を改善する
 →プレーンな用語で書く。悪いことも書く。もっと面白く書く(定型文の貼り付けはやめる)。


<日本の制度への洞察>
私も常々、開示情報の見にくさ(醜さ)に辟易してきた。FRCのレポートと同じく、無駄な情報がとにかくダラダラ続くことに我慢ならない。その最たる例として、FRCと同様にストックオプション・金融商品注記を挙げていた。他にも、新株予約権の長い情報がダラダラ続くし、コーポレートガバナンスの情報は記載例そのままの会社が多くて退屈極まりない。

会計基準や適用指針には丁寧な設例があるし、財務諸表等規則などには注記の詳細が規定されているし、開示支援会社(プロネクサスなど)の記載例には詳細な記述があるし、監査法人が作成するチェックリストには詳細な要求があるので回避するには理屈がいるし。。。


述べてきた問題点や要改善事項は、完全に日本にも当てはまる。原則主義的な考えを常に持ち、情報が有用かどうかという視点でクライアントと議論をしているつもりなのだが、私の上司達は「困ったら開示しておけ」、「開示しないでいいって、どこに書いてあるの?」という主張をされる方が多く、結局開示が増加する一方である。


「多いことは良いことだ」、というわけではないのである。(参考:ロッテのCM


原則主義と一言で言っても、その運用が極めて難しいのはIFRS適用と同じである。今までのルールベースに凝り固まった石頭たちを説得するのは骨である。開示制度に原則主義が導入されても、所詮は横並び発想しかなければ結果は変わらない。

開示情報の質を高めるというのは本当に大変な作業だと思う。