昨日の続きで、原発関係ネタ。

思うところのトピックとして下記3つを挙げたが、そのうち②③について筆を進めたい。

 「アンチ原発だ、原発は全機停止だ」という人々は、その場合のコスト負担をどう考えているのか

 独占会社としての東電の利益とは何だったのか

 他の電力会社は今、何をしているのか

 


②独占企業である東電は一体どれほど儲かっていたのか、ここ10年の有価証券報告書で確認してみた。新潟中越地震の影響で柏崎がストップした影響でH20.3期が薄氷の利益、原油急騰の影響があったH21.3期を除くと、見事なまでに3-4千億円の経常利益(一般的な収益レベルを意味する指標)を確保している。この面白みのないビジネス、競争がほとんど存在しないことなど考えると、驚異的な水準だ。

ここでは、この利益の意味を考えたい。
利益の源泉は主に2つあると思う。1つは負担したリスクに応じた相応の取り分、1つは情報の非対称性を利用した不当なもの(本来払うべきコストを負担していないか、本来あるべきよりも高い料金請求により収益計上していたか)、となる。
後者で使った「情報の非対称性」という言葉であるが、端的に言えば消費者が無知や無力ということである。これをうまく利用して、より安いものを使い、より高く売りぬくことが利益の源泉である、ということである。

もうお分かりであろう。
東電の過年度利益の大半は後者から発生している。必要コストを無視し、高い電力料金を請求してきたからである。本来は過年度に多額の原発対策コストやバックアップコストなどを計上し、独占企業として「ほどほど」の利益となるべき会社であった、つまり過年度の利益は嘘っぱちであり、旧マネジメントなど甘い蜜を吸った人間達の逃げ切りである。


そして面白いニュースが飛び込んできた。東電役職員の報酬カットが打ち出されているが、これはまさに体質を表してしまったものといえる。
今回の悲劇は未曾有の大震災が引き金になったものだが、代々の東電マネジメントの不作為によるものがその根幹にはある。これは衆目の一致するところ。つまり、人災である。これだけの人災を引き起こした張本人が、会長社長含め報酬半分カットですまそうという姿勢には大いに落胆させられる一方で、妙に納得もできる気がする(諦め)。個人的には、この判断が炎上する結果、トップ層は全カットになると予想しているが。


さて、次の③に移ろう。
電力会社は東電だけでなく、全国のXX電力がそれぞれに原発を保有している。関西電力は原発銀座といわれる若狭湾に大量の原発を稼動させているし、中部電力も世界一危険と言われる浜岡原発を稼動させており、常に騒動の渦中にいる。
今回の福島第1原発の事故に対応しての、各電力会社の原発対策というのはあまり表には出てきていない。コストの兼ね合いもあり、簡単にはリリースできないだろう。推察するに、多数の学者などを動員して綿密なシュミレーションが行われており、内々にリスク分析をしていることが想定される。当たり前であろう、周辺住民を保護するというよりは、自分の会社を守るためには。

ここで、各社の善良なる判断に期待するだけでは、何も進まない。上場会社である以上、利益への責任を負っており、「想定外」の事象にはできるだけ対応はしたくないためだ。
そのために経産省にある原子力安全保安院や学会などがガバナンスの一翼を担っており、原発各社へ安全対策を迫るのである。しかしながら、現状のこの体制には大いなる不備があり、それは全員が結局は「原発推進派」なのである。この体制が是正されなければ、10年後か30年後かは分からないが、第二の福島は起きてしまうだろう。

日本の電力会社は、政府や学会などの仕組全体として構造改革することが求められている。私は、原発は是々非々で議論し、安全性や経済性が優れていると客観的に認められれば進めるべきだ、というスタンスを取っている。批判しているのは、一方的なこじつけ論理で、危険な原発を「それらしく」合理的に粉飾して、大衆を欺く手法である。

最後に付け加えるなら、世界最悪の立地条件にある中電浜岡原発には心底恐怖を感じる。中電及び日本政府の英断を渇望する。